北海道大学 樋口 幹雄
1.はじめに
世界各国が環境・エネルギー問題へと取り組む中,環境負荷が少なく,低炭素社会を実現する新しいテクノロジー研究は緊急性を有する課題となっている。近年,レアメタル(In等)を利用した太陽電池など,クリーンエネルギーを高効率で得るための様々な方式が提唱されている。
その中で,太陽光励起レーザーが太陽光を人類に有用な形態に変換して利用するテクノロジーの一つとして着目されている。このレーザーは,レーザー結晶を大型レンズで集光した太陽光で励起し,共振器を用いてレーザー光を得るもので,CO2の排出を抑制し,化石燃料の使用を大幅に低減できる次世代の光エネルギーである。
しかしながら現状では,集光レンズの高性能化の困難から太陽光の集光効率が低いこと,またレーザー発振効率の低さなどの問題から太陽光からレーザーへの変換効率は数%程度に留まっており,実用化への課題となっている。
そこで我々は,太陽光励起レーザーの高効率化を目的に,独自の結晶育成技術と,レーザー発生・制御技術を生かし,レーザーのキーデバイスであるレーザー結晶そのものの開発から,結晶の形状,冷却法,共振器構成などのレーザー装置構築までを一貫して行うとともに,理化学研究所の持つ超精密加工技術を用いて作成された高性能大型フレネルレンズと組み合わせることにより,太陽光からレーザーへの変換効率の大幅な向上を目指す。本稿では,太陽光励起に適した,Nd, Cr共添加レーザー結晶の開発の現状と,そのエネルギー利用への可能性について紹介する。
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