ミニインタビュー
加賀田先生に聞く
カーボンニュートラルに向け応用に期待
─この研究を始めたきっかけを教えてください。
(加賀田)大阪工業大学と同じ学園(学校法人)に摂南大学があり,その農学部の先生から画像処理で土壌の有機物量を測る研究を一緒にやらないかと呼びかけがあり,手を挙げたのがきっかけです。私はもともと機械系出身で農学分野に興味はありませんでしたが,そういうところでも自分の経験や知識が活かせるのは,世界が広がった感じがして面白いと感じています。
─研究で苦労していることはありますか。
(加賀田)金属などの工業材料とは違って土壌はそれぞれ全く特性が違います。今回測っている木炭はもちろん,サンプルでさえ特性が全く異なる世界です。実験条件を変えていないのに結果が変わってしまう多様さ・不均一さを,どう捉えていくかが難しいところです。
─会社員時代の研究を教えていただけますか?
(加賀田)ポリエステルやナイロンといった合成繊維を作る装置メーカーで,糸を加熱したり,高速で巻き取ったりする機械の開発をしていたので,サーモグラフィーは良く使っていました。就職してからも出身の研究室に出入りしてドクターを取り,その後は客員研究員として仕事とは関係なく研究活動をしていました。熱工学で計測の研究をやっていて,レーザーを使った光音響法の研究をしていました。
─この研究がどのように応用されることを期待していますか。
(加賀田)伐採した木や草を燃やし,炭にして農地に埋めるというカーボンニュートラルに向けた新たな炭素固定の手法の取り組みがありますが,そういう評価技術や農業分野に限らず,欠陥検出や特性評価など一般の工業材料の製造分野や品質管理に使えたらと思っています。
─若手研究者が置かれている状況をどう見ていますか。
(加賀田)会社員だった身からするとひどい状況だと思います。博士号を取った人が,任期付きの職に就かざるを得ず,将来に不安を感じながら,給料も少ない,研究費も少ないなかで研究に取り組んでいる状況で,日本は大丈夫なのかと思います。任期が切れて職を変えざるを得ず,研究を続けられなかった人の話もよく耳にします。技術や学術を引っ張っていくはずの若い研究者が報われる世の中になってほしいですね。
─学生に向けてメッセージをお願いします。
(加賀田)研究や開発は,自分のアイデアを実際に形にできるとても贅沢な仕事です。これは給料やお金に変えられない喜びのある仕事なので,ぜひ研究や開発を目指す若い学生がたくさん出てきてほしいと思っています。
(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘)
カガタ カケル
所属:大阪工業大学 工学部環境工学科 講師
略歴:2007年大阪府立大学大学院工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了,化学メーカー,機械メーカーに勤務し,開発部門で技術・製品開発に従事。企業在籍中の2016年に博士(工学)を取得(大阪府立大学)。2021年から現職。大阪公立大学大学院工学研究科の客員研究員としても活動中。専門は熱工学。
趣味:ドラム(主にロック。歳を取ってもできるジャズに移行していきたいと思っているが,まだ手が出せていない)
マラソン(膝を痛めたので現在はお休み中)
(月刊OPTRONICS 2024年7月号)