5. おわりに
本稿ではカメラを用いた可視光通信の通信速度向上のために筆者らが開発した回転式LED送信機を紹介した。本送信機ではLEDを回転させながら点滅させることで残像を生み出し,その残像を利用して通信速度を向上させる。送信機の試作機を用いた実験の結果,従来手法よりも60倍の通信速度向上を確認した。
筆者らは回転機構を有する装置に本送信機のメカニズムを取り付けて利用したいと考えている。例として,回転灯やプロペラ,Persistence of Vision(POV)ディスプレイ等への導入を検討している。筆者らの装置はまだ試作段階であるが,回転式LED送信機は様々なアプリケーションの可能性を秘めていると期待している。
謝辞
本研究の一部は,JSPS 科研費(JP17K18282, JP21K11948),及び,名古屋大学未来材料・システム研究所の助成を受けて行われたものである。記して謝意を表する。また,本装置を開発するにあたり多くの助言を与えてくださった長岡技術科学大学 圓道知博先生,開発に携わった筆者の研究室の学生達に深く感謝する。
2) P. H. Pathak, X. Feng, P. Hu, and P. Mohapatra, “Visible light communication, networking, and sensing: A survey, potential and challenges,” IEEE Commun. Surv. Tut., vol. 17, no. 4, pp. 2047-2077, Sep. 2015.
3) H. Haas, “LiFi is a paradigm-shifting 5G technology,” Rev. Phys., vol. 3, pp. 26-31, Nov. 2018.
4) S. Arai, M. Kinoshita, and T. Yamazato, “Optical wireless communication: a candidate 6G technology?,” IEICE Trans. Fundamentals., vol. E104-A, no. 1, pp. 227-234, Jan. 2021.
5) T. Yamazato and S. Haruyama, “Image sensor based visible light communication and its application to pose, position, and range estimations,” IEICE Trans. Commun., vol. E97-B, no. 9, pp. 1759-1765, Sep. 2014.
6) T. Yamazato, I. Takai, H. Okada, T. Fujii, T. Yendo, S. Arai, M. Andoh,
T. Harada, K. Yasutomi, K. Kagawa, and S. Kawahito, “Image-sensor-based visible light communication for automotive applications,” IEEE Commun. Mag., vol. 52, no. 7, pp. 88-97, July 2014.
7) T. Nguyen, A. Islam, T. Yamazato, and Y. M. Jang, “Technical issues on IEEE 802.15.7m image sensor communication standardization,” IEEE Commun. Mag., vol. 56, no. 2, pp. 213-218, Feb. 2018.
8) T. Yamazato, M. Kinoshita, S. Arai, E. Souke, T. Yendo, T. Fujii, K. Kamakura, and H. Okada, “Vehicle motion and pixel illumination modeling for image sensor based visible light communication,” IEEE
J. Sel. Areas Commun., vol. 33, no. 9, pp. 1793-1805, Sep. 2015.
9) 木下雅之,山里敬也,岡田 啓,藤井俊彰,荒井伸太郎,圓道知博,鎌倉浩嗣,“高速二眼カメラによる画素選択/最大比合成受信を適用した可視光通信性能の評価実験,” 信学論B, vol. J102-B, no. 2, pp. 90-97, 2019 年2月.
10) C. Danakis, M. Afgani, G. Povey, I. Underwood, and H. Haas, “Using a CMOS camera sensor for visible light communication,” in Proc. IEEE Globecom Workshops, 2012, pp. 1244-1248.
11) S. Arai, Z. Tang, A. Nakayama, H. Takata, and T. Yendo, “Rotary LED Transmitter for Improving Data Transmission Rate of Image Sensor Communication,” IEEE Photon. J., vol. 13, no. 4, pp. 1-11, Aug. 2021.
■Associate Professor, Department of Electrical and Electronic Engineering, Okayama University of Science
(月刊OPTRONICS 2022年1月号)
このコーナーの研究は技術移転を目指すものが中心で,実用化に向けた共同研究パートナーを求めています。掲載した研究に興味があり,執筆者とコンタクトを希望される方は編集部までご連絡ください。 また,このコーナーへの掲載を希望する研究をお持ちの若手研究者注)も随時募集しております。こちらもご連絡をお待ちしております。 月刊OPTRONICS編集部メールアドレス:editor@optronics.co.jp 注)若手研究者とは概ね40歳くらいまでを想定していますが,まずはお問い合わせください。
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