2.2 電子波長制御Cr:ZnSeレーザーの出力特性
電子波長制御Cr:ZnSeレーザーの出力特性を評価した。図2にAOTFに印加するRFを変化させることで得られる出力エネルギーの波長依存性を示す。励起エネルギーは24 mJとした。AOTFに印加するRFを36.2〜46.8 MHzの間で変化させたとき,Cr:ZnSeレーザーの発振波長は2.12〜2.70μmの波長領域で制御することが可能であった。また,それぞれの波長において出力エネルギーが最大になるように0〜5 Wの間でRFの出力を調整した結果,Cr:ZnSeの中心利得近傍の2.41μmで出力エネルギーのピークが観測された。
なお,この時の出力エネルギーは7.9 mJであった。次に,励起エネルギーに対する出力エネルギーの関係を図3に示す。Cr:ZnSeレーザーの発振波長は,AOTFに45.0,43.0,41.0,39.0及び37.5 MHzのRFをそれぞれ印加することで,2.20,2.31,2.41,2.52及び2.63μmを選択した。
励起光源であるTm:YAGレーザーのパルスエネルギーを0から23.2 mJまで増加させたとき,それぞれの波長において出力エネルギーが線形増加することが確認された。また最大出力エネルギーは波長2.41μmにおいて,励起エネルギーが23.2 mJのときに7.9 mJを得た。このとき,エネルギー変換効率は34.1%,発振しきい値は1.4 mJであった。
また図4にCr:ZnSeレーザーの出力ビームの空間プロファイルを示す。波長2.20,2.31,2.41及び2.52μmではTEM00のビームプロファイルが観測され,励起エネルギーを変化させてもビーム品質が維持されることを確認した。しかし2.63μmの場合のみ,水平方向のビーム品質の低下が観測された。これはAOTF内部で回折される光の回折角が波長毎に異なるため,発振波長を変化させることでレーザー共振器に僅かなずれが生じたことが原因である。