【本連載執を筆者された黒澤宏氏は2019年4月15日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。】
右の写真は,緑色のレーザー光を出しているレーザー装置です。光がまっすぐに進んでいるのが分かります。この光もレーザーですし,装置もレーザーと呼んでいます。
「レーザーとは,役に立つ新しい光とそれを作る機械」のことです。
構造を簡単に描くと,右図のようになっています。反転分布を持つ媒質(レーザー媒質),反転分布を作るための外部励起源,レーザー媒質で作られた光を往復させて増幅するための2枚のミラーで構成された共振器からできています。このような難しい言葉も慣れてしまえば,何てことはありません。これから,このような言葉の意味を詳しく,分かりやすくお話ししていきます。
20世紀を一言でいえば「エレクトロニクス」に代表される時代でした。電話,放送,医療にと,エレクトロニクスが大活躍し,家庭にもどんどん入り込んできた時代です。おかげで,とても便利で快適な生活を送る事が出来るようになってきました。今の私たちは「エレクトロニクスのかご」の中で暮らしているのです。
エレクトロニクスと言えば「トランジスタ」や「コンピュータ」ですが,これらと並んで,20世紀最大の発明の中に「レーザー」が入っています。トランジスタは集積回路(ICやLSI)に発展し,私たちの身の周りにあふれるようになってきましたが,一方のレーザーはそれほどでもありません。
でも,「21世紀は光の時代」と言われています。光が大活躍する時が来るのです。レーザーというと,何だかむずかしいもの,何だかこわいものというイメージを持っていませんか。身近な例では,スーパーのレジでバーコードを読むのに使われています。一度レジの人の側から見てみてください。赤色か緑色の光線が見えます。
CDやDVDの中にも入っています。ブルーレイ・ディスクとは,青色半導体レーザーを使ったDVDのことです。自動車工場に行くとレーザーで鉄板を切ったり,穴を聞けたり,くっつけたりと,レーザーロボッ卜が大活躍しています。通信にも大量に使われていて,未来の発電といわれている核融合を起こすのにも使われようとしています。
この講座では,このようなレーザーについて,第一歩からやさしく,そして正確に書いてあります。この講座の記事を読んで,レーザーについて興味を持ってください。きっと面白くなるものと思います。この講座は「光とは何ですか?」「レーザーとは何ですか?」の問いに答えることから始まって,「いろいろなレーザーの構造や特徴」そして「レーザーが使われている応用例」についてお話しします。レーザーの本当の姿を知って,新しい利用法を見つけ,来る光の時代に即応できるようにするのがこの講座の目的です。