長波長光応答性酸窒化物光触媒の製造と水分解反応への応用

著者: 編集部

5. おわりに

本稿で記した製造法で得られる長波長光応答性の酸窒化物光触媒は,現状,従来法で合成された酸窒化物光触媒に比べて水分解反応活性が劣り,長波長光を吸収できるという利点を十分に活かせていない。しかし,本手法を用いれば,組成が良く制御された長波長光応答性の酸窒化物粉末をグラムスケールで合成することが容易であり,光照射下で起こる現象を詳細に解析しながら光触媒の調製法を改良すれば水分解活性が飛躍的に向上すると確信している。このような画期的な光触媒の製造法の創出を通じて,可視光水分解反応による水素製造技術の発展に貢献したい。

謝辞

本研究は主にJSTさきがけ「反応制御」,NEDOグリーンイノベーション基金事業・グリーン水素(人工光合成)等からの化学原料製造技術の開発・実証,三菱ケミカル㈱からの支援により行われた。Al ドープSrTiO3に関する研究は信州大学高田剛特任教授,東京大学山田太郎博士,西山洋博士らを中心に行われた。電子顕微鏡観察に関しては東京大学中林麻美子氏にご協力いただいた。GaN:ZnO等の開発は中国上海科技大の馬貴軍助教,信州大学の岩佐捺伽氏,阿部慎太郎氏の協力のもと進められた。水分解用光触媒システムの研究開発全体は堂免一成信州大学特別特任教授(兼東京大学特別教授)の統括のもと進められた。

参考文献

1) Hisatomi et al., Nat. Catal., 2, 387 (2019).
2) BP Statistical Review of World Energy, 71st edition (British Petroleum, 2022).
3) Segev et al., J. Phys. D: Appl. Phys., 55, 323003 (2022).
4) 久富ら,日本化学会編エネルギー変換型光触媒(共立出版, 2017).
5) Takata et al., Nature, 581, 411 (2020).
6) Takata et al., J. Phys. Chem. C, 113, 19386 (2009).
7) Nishiyama et al., Nature, 598, 304 (2021).
8) Maeda et al., Chem. Mater., 22, 612 (2010).
9) Maeda et al., J. Phys. Chem. Lett., 1, 2655 (2010).
10) Wu et al., Dalton Trans., 46, 2643 (2017).
11) Liu et al., ACS Catal., 12, 14637 (2022).
12) Lee et al., J. Phys. Chem. C, 111, 1042 (2007).

■OSynthesis of long-wavelength photoactive oxynitride photocatalysts and their application to water splitting reaction
■Takashi Hisatomi
■Professor of Research Initiative for Supra-Materials, Interdisciplinary Cluster for Cutting Edge Research, Shinshu University

ヒサトミ タカシ
所属:信州大学 先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所 教授

(月刊OPTRONICS 2023年10月号)

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