経営指標への期待

(コンサル商売のタネ)

市場調査稼業が成立するのは,市場が変化するからです。新しいデータ収集のニーズが自動的に生じ,調査稼業も継続できることになります。経営戦略コンサルティングの場合にも調査稼業と同様に,稼業を支える色々な変化があります。

調査にはないコンサルティングでの特徴的な変化が,新しい経営用語の出現です。市場変化は市場側から発生しますが,経営用語はコンサルタント側から作り出せる,出される変化です。つまり,コンサル側にとってはシーズプッシュ的変化です。

(多様なコンサルティング用語)

コンサルティング活動に関連しては,辞典があるほど多くの用語があります。特に多いのが,企業の経営状態を把握するための視点に関する用語,その視点に沿って必要なデータを収集する手法に関係する用語です。息の長い用語もあれば,短命な用語もあります。

これらの用語の多くは米国発であることが一般的で,したがってカタカナ用語です。入社直後にKJ法という言葉を初めて耳にした時,米国発の用語の多さに驚いていたので,原語は何んですかと先輩に質問しバカにされました。

(流行った用語)

一時期流行った用語例にKPIがあります。その少し前に流行ったEVAもそうでしたが,紹介されたあと結構急速に普及したように記憶しています。このような流行り用語の出現時にはよくあることですが,関連する解説書も複数出版されました。

その頃,容易には何でこれがキーのインディケータとなるのか理解困難なKPIがいくつも紹介されました。理解されるのが困難なKPI,計測が困難なデータを含むKPIは,実用的ではないですが,研修などでは受けを取り易いので,私も事例としてよく使いました。

(増殖するKPI)

コンサルタントと協力し,全社的なKPIを決めたとします。するとコンサルタントから,事業部レベルのKPIを決めましょうといった営業がかかります。それに対応して活動し結果が得られると,当然,部レベルでのKPIの必要性が主張されることになります。

キーとして注目すべきはどんなパフォーマンスかは,組織の階層ごと業務ごとに違います。これをいちいち決めていくのはそれなりに手間がかかります。部外者であるコンサルタントは業務の詳細に疎いので,KPI構築のための社内ヒアリングも継続します。

(個人のKPI)

「私のグループは全員精鋭です」。お客様の新任課長さんの発言でした。頼もしい発言ではありますが,グループのメンバーが全員同じパフォーマンスを上げるということはありません。どうしても凸凹が生まれます。調子の良い人ばかり,良い時ばかりではありません。

そのような凸凹を踏まえて,各人の目標設定が行なわれているわけです。設定されているのは,わざわざそんな言葉は使われませんが,KPIと言えるのではないでしょうか。目標として上司と部下で握ったKPIです。握り合っていることが大事なKPIです。

(失敗も大切なインディケータ)

人・モノ・金すべてが同時に充足すると,かえって組織の成長が阻害されるといわれます。個人の場合でも,成長の糧となる不足,不調もあります。全社用のKPIではともかく,個人を対象とした場合は,効果的な不足や不調も反映できるKPIが望まれます。

また,ICTが進んだいまはKPIの多様化も容易です。個人の多様性を積極的に反映した,多様なKPIの設定が大事だと思います。そんな多様な目標設定が行なわれれば全員精鋭という若い課長の主張も現実的になると思います。

もう一点。KPI以外の指標を含めてですが,青天井になるような指標は避ける方が好ましいです。そんな指標はコンサル向きであっても評価される側には迷惑な指標です。

池澤 直樹
池澤 直樹
著 者
池澤 直樹(いけざわ なおき)
元・ ㈱野村総合研究所 チーフ・インダストリー・スペシャリスト
慶應義塾大学 大学院 工学研究科 計測工学専攻 修士課程修了。野村総合研究所入社後約10年間,主としてエレクトロニクス関連の市場調査・技術調査を担当。次いで製造業分野を中心に研究開発・事業開発のコンサルティング活動に従事。機能デバイス・素材産業研究室長,技術産業研究部長,産業コンサルティング部長を経て2001年から2016年の退職までチーフ・インダストリー・スペシャリスト。

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