光の回折限界を超える!数学的アプローチによる画像鮮鋭化技術

東京農工大学での実験 半径70.2 μmに広がってしまっているガウシアンビームプロファイルデータ(左)を鮮鋭化処理により半径7.8 μmの点像(右)に変換
東京農工大学での実験
半径70.2 μmに広がってしまっているガウシアンビームプロファイルデータ(左)を鮮鋭化処理により半径7.8 μmの点像(右)に変換

同社ではこの技術の有効性を証明するため,東京農工大学准教授の室尾和之氏に協力を依頼し,センサー上に2本のガウシアンビームを照射して得られた画像の鮮鋭化を行なっている。この実験では半径70.2μmのぼやけた1つの楕円像に広がってしまったビームプロファイルデータを,鮮鋭化処理により半径7.8μmの2つの鮮明な点像に変換することに成功。2本のガウシアンビームが分離されたことで,このアルゴリズムが正しく作用したことと,9倍の高精細化を実現できることを証明した。この成果は2015年12月に行なわれた,レーザー学会・第485回研究会にて発表されている。

この「新型ノンブラインド デコンボリューション」の開発が評価され,西形氏は,テクノロジー系メディア「WIRED」とドイツの自動車メーカー「Audi」が主催する「WIRED Audi INNOVATION AWARD」を2016年に受賞した。なお,同賞はバイオイメージング法のImPACTプログラム・マネージャーを務める,東京大学教授の合田圭介氏も受賞している。

キャスレーコンサルティングではバイオ分野におけるライブイメージングの他,半導体や化学/素材分野など,検査や研究に電子顕微鏡を用いている業界にその代替としてこの技術を提案している。

現在,製品化に向けてUSBによる外付け鮮鋭化ユニットと,FPGAそのものを機器に内蔵する2つのタイプの準備を進めており,1,2年以内のリリースを目指している。また,送ってもらった画像データを鮮鋭化して戻すというWEBサービスも既に始めている。

さらに,処理が高速なので静止画だけではなく,動画にも応用することもできる。PCの性能に依存するものの4Kに応用するとしており,現在,生きた細胞の動画撮影や,低コストレンズにおける監視カメラ鮮鋭化についてメーカーや大学と共同研究を進めている。

光学顕微鏡以外にもデジタルカメラや望遠鏡などの画像鮮鋭化にも使える技術なので,応用次第でその可能性はさらに広がりそうだ。

キャスレーコンサルティングは,4月19日(水)〜21日(金),パシフィコ横浜で開催する光技術総合展示会「OPIE’17」の「産業用カメラ展」に出展,「新型ノンブラインド デコンボリューション」を紹介する(ブースNo.E-17)。◇

(月刊OPTRONICS 2017年4月号掲載)