東京科学大,深層学習で蛍光免疫センサーを高性能化

東京科学大学と米カリフォルニア大学アーバイン校は,蛍光免疫センサーを高性能化させる独自の深層学習モデル「NanoQ-model 1.0」を構築した(ニュースリリース)。

標的分子を検出できる免疫センサーは,環境調査や食品分析,医療などで不可欠となっている。しかし,高感度なセンサーの開発には膨大な試行錯誤が必要で,数ヵ月を要していた。研究では,深層学習を利用して構築した分類モデルにより,このプロセスをわずか数日に短縮することに成功した。

今回の対象はクエンチ抗体(Q-body)と呼ばれる蛍光免疫センサー。Q-bodyは,抗体のN末側が蛍光色素で標識されており,抗原が結合すると蛍光色素のクエンチ(消光)が解除され,蛍光が上昇する。したがって,蛍光色素が強く消光する抗体ほど大きい蛍光応答が期待できるが,この消光効果は抗体ごとに異なり,予測が極めて困難だった。

研究グループは,酵母を用いたスクリーニングによって,消光効果を基準にして抗体ライブラリーをFACSで分類し,それぞれのプールを次世代シーケンス解析したのち,アミノ酸配列を使ってタンパク質言語モデルProtBert-BFDを再学習させ,高性能なQ-bodyとなるアミノ酸配列を予測できる独自モデルを構築した。このモデルを新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に結合する抗体で検証したところ,予測された変異の8割以上で消光が強まり,検出感度の向上も確認できたという。

このモデルの誕生により,免疫センサー開発が飛躍的に加速するだけでなく,将来的にはアミノ酸配列だけで目的の機能を持つかどうかの見極めが可能となる。研究グループは,タンパク質エンジニアリングの新たな可能性を切り拓くと期待している。なお,このモデルはGitHubで公開されている。

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