東日本電信電話(NTT東日本)は,光ファイバセンシング技術を応用し,地下に敷設してある通信用光ファイバを活用した路面下の空洞検知の実現性を検証するプロジェクトを2025年2月13日(木)より開始したと発表した(ニュースリリース)。
都市部や住宅街では,道路下に上下水道やガス,電気,通信などの地下管路が多く設置されており,これらの劣化が原因で路面下に空洞が発生した場合,重大事故につながる恐れがある。空洞が原因とみられる道路陥没は年間1万件以上発生している一方,現状では地下2m程度以上を非開削にて確認することは難しく,空洞の発見が大きく遅れることも懸念される。
そのため,同社が保有する地下の通信用光ファイバを活用することで,より深い地点の空洞検知の実現性を検証するプロジェクトを立ち上げることにしたという。同社は,トンネル掘削工事における振動影響範囲の可視化や豪雪地帯における道路除雪の判断などにおいても,このプロジェクトで活用する光ファイバセンシング技術を用いた実証に成功している。
この技術は,市中に張り巡らされている通信用光ファイバが振動センサとなるため,新たなセンサの設置が不要で,電気式の振動センサと異なり,通信用光ファイバのルートに沿った区間を連続的に無給電でモニタリングできる。
また,地下に敷設された通信用光ファイバを活用することで,地表からの探査技術と比較して深い地点の地中振動特性の変化をより精度高くモニタリングできるほか,計測から可視化まで人手を介さないため,常時(24時間365日)モニタリングし続けることができる。
プロジェクトでは,流域下水道などの大型地下埋設管と並行して敷設されている通信用光ファイバの片端にセンシング装置を取付け,周辺の地盤を経由して通信用光ファイバに伝わってくる自動車などの走行に起因する振動データを収集していく。また,このプロジェクトの始動に先駆けて,埼玉県の一部エリアにおける振動データの収集を開始している。
取得したデータについては大学など研究機関と連携して分析を行ない,前後の時間との振動特性を比較することにより路面下の土砂が大きく動くことで新たに発生した空洞を検知したり,前後の区間との振動特性を比較することにより過去から存在していた空洞を検知したりすることの実現性を検証していくとしている。
また,このプロジェクトに賛同した自治体との共同検証体制の構築に取り組み,空洞の存在が疑われるデータを検知した場合には現場調査を当社と協働で行ない,実際の空洞有無を確認していくことなどを協議の上,検証を進めていくという。