大阪大学,立命館大学,京都大学は,従来型の波長変換デバイスとは全く異なる超小型な微小共振器デバイスを作製し,波長変換により波長199nmの真空深紫外(VUV)光を発生することに成功した(ニュースリリース)。
近年,微細加工,半導体のウエハーやフォトマスク検査,医療分野などにおいて,波長200nm以下のVUVレーザー光源の需要が急速に高まっている。
しかしながら,従来のArF(波長:193nm)やF2(波長:157nm)エキシマレーザーは大型であり,腐食性ガスを使用するため頻繁なメンテナンスが必要となるなど,実用面での問題を抱えている。
波長変換技術を用いた全固体VUVレーザー光源は,上記の問題を解決する有力な候補。しかしながら,既に実用化されている角度位相整合を用いた波長変換結晶では,VUV帯域で第二高調波発生(SHG)の位相整合が達成できず,和周波数発生(SFG)による大型かつ複雑なシステム構成になってしまう。そのためVUV帯域でSHGが可能な新規構造・新規結晶による波長変換デバイスを新たに開発する必要がある。
そこで,研究グループは,吸収端波長が130nmと極めて短く,高い光学非線形性と光損傷耐性を有しながらも,従来の波長変換デバイスに必須であると考えられてきた強誘電性や複屈折性を持たない SrB4O7(SBO)結晶に微小共振器構造を組み合わせることを考えた。
SBO波長変換層を高反射分布ブラッグ反射器(DBR)で挟んだ微小共振器型SHGデバイスを設計し,構造最適化により厚さ数mのデバイスで高い波長変換効率が期待できることを見出した。実際に作製したSBO微小共振器型SHGデバイスに波長398nmの青紫色レーザー光を入射したところ,波長199nmのVUV光を発生することに成功した。
今回の研究で得られたSH光の波長である199nmは,広く実用化されている波長変換結晶であるBBO(β-BaB2O4)やCsLiB6O10(CLBO)の理論最短SH波長を下回るものであり,SFGによる大型で複雑な全固体VUVレーザーシステムを直線型のシンプルなシステムに置き換える可能性を有している。また,DBRを構成する材料を工夫することで,より短波長でのデバイス動作も期待できる。
研究グループは,この成果は,VUV帯域における小型で高効率な次世代の全固体レーザー光源の実現に向けた重要な一歩であり,産業および医療分野での幅広い技術革新に繋がるとしている。