NTTら,APNでクラウド内視鏡システムの実現へ

日本電信電話(NTT)とオリンパスは,世界で初めて内視鏡の映像処理機能をクラウド上で実現するクラウド内視鏡システムをIOWN APNを用いて構成し,今年3月からの実証実験にて,APNがクラウド内視鏡システムの実現に向けたネットワーク課題を解決できることを実証した(ニュースリリース)。

現在,内視鏡において,映像処理等処理負荷の高い一部の機能をクラウド上で分担する「内視鏡のクラウド化」が議論されているが,内視鏡で捉えた高画質の映像を安定的かつ低遅延でクラウド上の映像処理システムへ送る事が課題となっていた。

今回,内視鏡スコープで撮影された映像を,内視鏡プロセッサを経由してエッジデバイスに送り,映像を非圧縮のままAPNを通じてサーバに転送した。映像を受け取ったサーバがAI等による映像処理を行ない,処理済みの映像をエッジデバイスに返送し,最終的にエッジデバイスに接続された操作者が閲覧するモニタに処理後の映像を出力した。

具体的には,距離約5mのケーブルによるローカル接続と距離約150kmのAPN接続の2構成にて映像処理を行ない,操作者のモニタに出力された映像を測定用デバイスで撮影しネットワークのデータ遅延計測,および映像比較評価を行なった。

リアルタイムで映像を確認しながら検査や手術を行なう内視鏡システムの特徴を踏まえると,モニタに出力される映像データ4K/60fpsが数フレームでも遅れて表示されると操作者に違和感を与えてしまう。

そこで今回の実験では約150kmのネットワークとして許容するデータ転送の遅延値を,映像の1フレーム以内にする事を目標として実験を行なった。結果は遅延値1.1ミリ秒となり,目標の1/10で転送が可能である事を実証した。

また内視鏡操作者の目視確認による映像比較評価の結果においても,ローカル接続とAPN接続とでは遅延・揺らぎの両面において差分が感じられないほどであることが確認でき,APNの遅延時間は映像処理のボトルネックにはなり得ないということを実証した。

今回エッジデバイスと約150km離れたサーバ間での映像処理が可能であることを確認できたことは,首都圏全域など広域エリアの病院を一カ所に集約した映像処理サーバで処理ができることの可能性を示しており,今後のクラウド内視鏡システムの社会実装に向けた貴重な知見を得られたとする。

両社は,今後もネットワーク伝送における医療データの高度なセキュリティ対策や複数の病院間での映像情報の共有によるリアルタイムでの遠隔診断や治療の実現などのクラウド内視鏡の社会実装に向けた技術課題の検討を進めるとしている。

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