京セラは,これまで測定が困難であった,極小物体の距離と大きさを計測することができる「AI測距カメラ」を開発したと発表した(ニュースリリース)。
世界の労働力不足は,先進国を中心に多くの国で共通する社会課題となっている。特に,日本の総人口に占める65歳以上の割合は世界で最も高いと言われ,労働力不足を補うため,一層の生産性向上が求められている。
その解決策の一つとして,現在,生産現場の自動化が進んでおり,人間の目の代わりとなり物体認識ができる高度なビジョン・センシング技術が求められるようになった。
同社が今回開発したAI測距カメラは,一つのセンサーに二つのレンズを搭載した独自のステレオカメラ構成を採用することにより,従来のステレオカメラでは不可能な超近距離センシングを可能としたという。
二つのレンズ間の距離を極めて狭めた(超狭基線長)ステレオカメラの構成を採用した。左右の視点の違いによる視差を従来よりも近距離で検知することができるため,極小物体の大きさを正確に計測することができるとしている。
また,AIのステレオビジョンアルゴリズムを採用し,高精度な距離計測を実現した。高精度な距離計測を実現するためには大量の学習データと膨大な学習時間が必要となるが,同社は学習コストを低減するために,データ収集コストを低減するためのCGによる学習データ生成技術と正解データを必要としない事前学習技術の二つの技術に取り組んだという。
特に,二つ目の正解データを必要としない事前学習技術については,中部大学との共同開発により最先端のAI技術を導入し,独自に改良を図った。
今回,これらの技術をステレオビジョンアルゴリズムに適用することで,極小物体の計測精度が向上するとともに,従来では距離計測することが困難な透明物体や反射物体についても対応が可能となった。これにより,従来の単眼距離計測に比べ,10倍の高精度を実現するとしている。