阪大ら,レーザーと中性子で高放射能を含む試料分析

大阪大学,日本原子力研究開発機構,量子科学技術研究開発機構は,レーザー駆動中性子源(LDNS)を用いた中性子共鳴透過分析(NRTA)システムにより,原子核の面密度が測定できることを実証し,核物質の非破壊分析に適用できる新しい手法を提示した(ニュースリリース)。

核物質を管理するため非破壊測定等が行なわれているが,将来的には,高い放射能レベルを伴う核物質の管理も想定されている。一般的に用いられる核物質の非破壊測定は,核物質から放出される放射線を測定する受動的な測定を行なう。

しかし,試料の放射能レベルが高い場合,対象としない放射線も検出器に入ってくるため測定が困難になる。そこで,外部から測定試料に中性子等を照射し,それによって引き起こされた反応を測定する能動的な分析技術の開発を行なわれている。

パルス中性子ビームを用いる中性子共鳴透過分析(NRTA)は有望な技術の一つで,試料中の原子核の面密度を測定することができる。この技術を実用化するには装置の小型化が必須。そのためには中性子の飛行距離を短くしても十分な分析能力が得られるように,短パルス中性子源が必要となる。

今般,レーザー技術の進展により,短パルスかつ高強度レーザーによるLDNSが新たな中性子源として注目されている。研究グループは,LDNSで生成した短パルス中性子を用いたNRTA測定で,原子核の面密度の計測が可能であることを示すことを目的に,実証実験を行なった。

実験では,大阪大学レーザー科学研究所の開発したLDNSにレーザー科学研究所のLFEXレーザーを照射してパルス中性子を生成し,模擬試料として板状の銀とインジウムを重ねたものを使った。レーザーショット直後は高電磁ノイズと大量のガンマ線と中性子が発生するため,通常の中性子検出器では容量を超えた信号を受けてしまい,正常な測定はできなくなる。

そこで,ゲート付き中性子検出器を導入し,レーザーショット直後の信号を受け付けないようにした。実験で使えるレーザーショット数は,レーザー装置の冷却のため1日に3回に限られている。そのため実験においては測定回路の調整等をできるだけ省略し,効率よく実験データを取得する必要がある。

研究グループは,検出器からの出力信号の全てをデジタル化して保存し,実験後に信号処理・データ解析を行ない,中性子透過スペクトルを得た。試料中の銀とインジウム原子核による透過率の減少から,それらの原子核の面密度を決定した。

研究グループは,核不拡散や核セキュリティ,科学研究や工学応用においての利用などが期待できる成果だとしている。

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