東京農工大学の研究グループは,微量のナノ結晶を流体に添加し,流れによる偏光変調を安定させることで,非接触(リモート)で流体の内部応力を正確に測定する新しい手法を開発した(ニュースリリース)。
血液などの流れは様々な要素が関与して形成されるゆえに予測が難しく,脳動脈瘤の破裂,血中がん細胞の転移,網膜剥離など様々なリスクを生じる。
そのために正確に力を正確に測定する必要があるが,流れに影響を与えてしまうことを避けるため,非接触で流れを測定することに価値がある。しかし,これまでの測定手法では難しく,特に三次元的な速度分布を持つ流体中の力を捉えることは困難だった。
研究グループは,様々な濃度のナノ結晶を含む懸濁液を用いて,矩形管流路(断面が長方形の流路)で偏光変調(光の偏光状態が変化する現象)データを測定した。この結果,従来の理論では無視されていた観察者の視線方向に沿った応力成分を考慮することで,3次元的な流れを正確に測定できること,およびその方法を明らかにした。この研究により,非接触で流体の内部応力を測定する新しい手法を提案した。
これは,微量のナノ結晶を流体に添加することで,流体に入射させた光の偏光変調を発現させ,この偏光情報から流体内部の応力を正確に推定するというもの。
具体的には,従来の応力光学則(応力-流動複屈折の関係式,一次応力光学則)と,従来では無視されてきた視線方向に存在する応力分布をも考慮した二次応力光学則を比較した。実験データは二次応力光学則モデルと良好に一致し,視線方向の応力成分を考慮することの重要性を明らかにした。
これにより,これまでの測定で高流量や三次元流れ場の応力測定が行なわれてこない原因をつきとめると同時に,複雑な流動における様々な力の非接触測定への重要な一歩を踏みだしたとする。
研究グループは,この手法を使って,注射中の薬液が身体に及ぼす力の正確な測定や,脳動脈瘤の発生メカニズムの解明を進めることで,人体への影響を最小限にする治療法への展開が期待されるとしている。