秋田大学の研究グループは,生きた細胞内の低分子量Gタンパク質の活性化を蛍光で可視化する新たな方法を開発した(ニュースリリース)。
低分子量Gタンパク質は細胞内で分子スイッチとしてはたらき,細胞の増殖,分化,細胞内輸送といったさまざまな機能を制御する。
低分子量Gタンパク質の活性化制御が破綻すると,がんや糖尿病,神経変性疾患などの重篤な疾患を引き起こすため,細胞内でのGタンパク質の活性化状態を把握することは大変重要となっている。しかし,これまでの方法では生きた細胞内の内在Gタンパク質の活性化状態を直接捉えることはできていなかった。
ほとんどの低分子量Gタンパク質は,GDPと結合した不活性化時には細胞質に存在するが,活性化してGTP結合型になると細胞内のさまざまな膜へと局在化し,その機能を発揮する。研究グループはこの性質を利用し,ホルモンやコラーゲンなど小胞体からの分泌に関わる低分子量Gタンパク質であるSar1の活性化を細胞内でリアルタイムに蛍光として検出することを試みた。
Sar1はGTP結合型の活性化状態となると,小胞体膜に結合し,小胞体からの分泌を担うCOPII被覆小胞の形成を促進する。そこで研究グループは,Sar1遺伝子のC末端に蛍光タンパク質mNeonGreenの一部を融合させた細胞をゲノム編集技術によって作製し,残りの蛍光タンパク質を小胞体膜上に発現させることで,小胞体膜に結合したSar1のみがmNeonGreenの蛍光として検出される系を構築した。また,このシステムをSAIYAN(SmallGTPase ActIvitY ANalyzing)システムと命名した。
この研究により,これまで不明だったSar1の活性化状態を細胞内で可視化することに,はじめて成功した。またSAIYANシステムを応用することで,コラーゲン分泌時に活性化Sar1 が特異的な局在を示すことが明らかになった。
SAIYANシステムは特定のオルガネラで活性化する低分子量Gタンパク質に汎く応用可能。研究グループは今後,SAIYANシステムをさまざまな低分子量Gタンパク質に用いることで,低分子量Gタンパク質の制御破綻によって生じる多くの疾患の治療法開発などに役立つことが期待されるとしている。