東工大,ネットのように伸びる超薄型生体電極を開発

東京工業大学の研究グループは,膜厚300–400nmのエラストマー薄膜の片側上に,単層カーボンナノチューブ(SWCNT)からなる繊維状の導電材料を薄く塗布した繊維ネットワークを形成することで,伸縮性と透湿性,自己接着性を兼ね備えた表面筋電位測定用の生体電極を開発した(ニュースリリース)。

筋繊維が収縮する際に発生した電位変化は,生体組織を伝播し,皮膚表面に到達する。これを表面筋電位と呼び,低侵襲で筋活動を測定する技術として活用されているが,従来の電極は分厚く,硬いために,装着時の違和感や蒸れによる炎症につながるなど,リアルタイムでの長時間測定には不向きだった。

研究グループは今回,簡便に高分子超薄膜を大量作製可能なグラビアコート法を用いてエラストマー超薄膜を作製し,この片面上にSWCNTを含んだ繊維状の水性インクを薄く塗布することで,伸縮性と透湿性を兼ね備えた導電性超薄膜電極を開発した。

この超薄膜のシート抵抗値は,導電性高分子PEDOT:PSSを用いた従来の導電性超薄膜と同程度(0.6kΩsq-1)だった。

エラストマー層が高い伸縮性を示すだけでなく,SWCNT繊維ネットワークの導電層は,みかん販売用の網袋(みかんネット)のように縦・横・斜めに原型の最大400%まで変形可能なことから,生体電極に求められる伸縮性を損なわない。また,一般的な濾紙よりも5倍ほど高い透湿性も実現し,蒸れによる皮膚の負担が低減されるという。

この導電性伸縮超薄膜を右腕前腕に接着剤なしで貼付し,表面筋電位測定ユニットと接続した。右手にトレーニング用のグリッパーを把持し,5秒ずつ「握る」,「解放する」を5回繰り返したときの表面筋電位を測定した。

結果,この導電性伸縮超薄膜は市販ゲル電極に匹敵する信号/ノイズ比(SNR)を示し,生体電極として十分使用できることが分かった。

研究グループは今後,装着者に違和感を与えずに生体筋の活動状態をリアルタイム,長時間測定することが求められるスポーツ科学や介護分野への応用が期待されるとしている。

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