神戸医療産業都市推進機構(FBRI),日本赤十字社近畿ブロック血液センター,淀川キリスト教病院は,X線照射することで生着・分化する能力を除去した他者の臍帯血造血幹細胞も,X線照射していない自己の幹細胞と同様に,損傷した血管や神経を修復・再生させる能力を有していることを明らかにした(ニュースリリース)。
白血病など血液疾患の患者に対して,他者の造血幹細胞の移植治療は広く行なわれている。ただ,移植後に他者の幹細胞が白血球細胞等に分化するため,自分の細胞を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)とよばれる重篤な副作用を惹起する等の問題点がある。
一方,脳梗塞,四肢虚血や脳性麻痺の患者に対して,自己の造血幹細胞を使った再生医療が行なわれ,その有効性も示されてきた。ただ,治療に際しては患者本人の骨髄や臍帯血から造血幹細胞を採取・調製することが必要なため,効果の高い造血幹細胞を十分量確保することが容易ではない等の問題点がある。
研究グループは,血管再生促進など,造血幹細胞を使った再生医療の基本的な作用メカニズムが,投与した造血幹細胞の生着・分化ではなく,投与直後のギャップ結合を介した作用であることを2020年に世界に先駆けて発見報告しており,その後も共同で,X線照射により生着・分化能を除去した造血幹細胞の再生医療への応用に関する研究を進めてきた。
今回の成果では,X線照射することで生着・分化する能力を除去した他者の臍帯血造血幹細胞でも,X線照射していない自己の幹細胞と同様に,損傷した血管や神経を修復,再生させる能力を有していることが明らかになり,X線照射により他者の造血幹細胞を使った再生医療が実施可能であることが証明された。
研究グループは,今回の成果により,臍帯血の有効利用などを通じて,造血幹細胞を使った再生医療の普及の可能性が,飛躍的に高まったとしている。