三井化学は,半導体の更なる微細化,生産性向上に不可欠な次世代の高NA,高出力EUV露光装置に対応したEUV露光用CNT(カーボンナノチューブ)ペリクルの生産設備を同社岩国大竹工場に設置することを決定した(ニュースリリース)。
「三井ペリクル」は,半導体ウエハーに光を照射して回路パターンを描くフォトリソグラフィ工程で,各露光波長に対して耐光性のある膜材料を選択し,高い透過率を得られるように膜厚設計したフォトマスク用防塵カバー。フォトマスクをクリーンに保ち,半導体の生産性向上につなげるとしている。同社はペリクルを1984年に発売して以来,半導体の微細化に合わせたペリクルの改良と製品品質の向上に努めてきたという。
社会課題解決に欠かせないICT技術,とりわけ第5世代移動通信システム(5G)上のAI・IoT・ビッグデータの活用は今後ますます加速し,社会全体のデジタル化が進んでいる。これらのデータ処理を担う半導体には高速処理能力化,低消費電力化が求められ,回路線幅7nm以下の超微細化ニーズが高まっており,微細化回路形成用のEUV(波長13.5nmの極端紫外線)露光技術の採用が本格的に拡大している。
同社はオランダASML社からEUV露光用ペリクル事業のライセンスを受け2021年に世界に先駆けてEUVペリクルの商業生産を当社岩国大竹工場で開始し,拡大する先端半導体需要に対応している。
採用が拡大しているEUV露光の次世代技術として,高NA(開口度0.55),高出力(≧600W)化が求められている。これらの露光技術を実現するためには,過酷な露光環境に耐えられる新たな素材のペリクルが必要とされている。
同社はこれらの露光技術革新に対応するため,高いEUV透過性(≧92%)と1kWを超える露光出力への耐光性を兼ね備えたCNTペリクルの事業化に向けた量産用設備を設置することを決定した。生産能力は年間で5000枚で,2025年12月の完工を目指している。
膜材にシリコン系素材を使用した既存のEUVペリクルに加えて,CNTを膜材に使用した次世代製品をラインナップすることで,半導体の高性能化と生産性向上に貢献していくとしている。