東大ら,XFELでユーロピウムの局在電子を直接観測 

東京大学と兵庫県立大学は,X線自由電子レーザー(XFEL)を提供する韓国のXFEL施設PAL-XFELにおいて,価数転移を示すランタノイド元素:Eu(ユーロピウム)を含む金属間化合物:EuNi2Si0.21Ge0.79)2を用いて,フェムト秒の時間分解能を持つ時間分解軟X線吸収分光測定に成功した(ニュースリリース)。

EuNi2(Si0.21Ge0.79)2は,Euイオンが2価(Eu2+)と3価(Eu3+)の間で価数転移を示すことが知られている。軟X線を用いた吸収分光測定によって,Euイオンが持つ局在電子(原子核周辺に束縛されている電子)の光励起ダイナミクスを選択的に捉えることで,価数転移を引き起こす局在電子の準安定状態を明らかにした。

この研究では,光励起強度依存性を調べることで,世界で初めてEu3+イオンに大きな全角運動量(電子が持つ軌道とスピンの角運動量を合わせた運動量)をもつ局在電子状態が1ピコ秒の超高速な時間スケールにて,実現していることを見出した。

局在電子はネオジウム磁石を代表とする高性能な磁性材料を実現する上で重要な電子であり,光励起によって磁気スイッチング(外場の存在に反応して磁性状態の変化をオンまたはオフの状態として識別し,制御する)を示す現象が注目を集めている。

この成果により,光励起で駆動する価数転移現象の理解に加えて,光励起磁気スイッチングを実現する鍵として,大きな全角運動量を持つ局在電子の存在を示したとしている。

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