理科大ら,可視~近赤に対応するHSI硬性内視鏡開発

東京理科大学,理化学研究所,スペイン ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学は,スーパーコンティニューム光源と音響光学可変フィルターを用いて,490nm~1600nmまでの幅広い波長に対応したハイパースペクトルイメージング(HSI)を実行できる硬性内視鏡システムを開発した(ニュースリリース)。

近赤外領域(800~2500nm)を利用した近赤外HSIは,可視光では識別しにくい対象物の成分を非破壊で分析できるため,食品分野や産業分野で注目を集めている。また,生体内の水分による吸収や散乱が少なく,透過性が高いことから,体の深部からのスペクトル情報を取得できるため,医療分野への応用も期待されている。

一方,1000nm以上の波長を使用すると,通常の可視カメラでは感度が低下する,色収差補正が可能なレンズも少ないなど,硬性内視鏡下で利用するには課題が山積していた。

今回,研究グループはスーパーコンティニューム光源と音響光学調整可能フィルターを使用し,可視光から近赤外領域までのHSIが可能な独自の硬性内視鏡を開発した。

得られたスペクトルの特性を評価したところ,画素ごとに波長(490~1600nm,6nm間隔)の分光スペクトルが計測され,強度については1064nm付近に約18mWのピークを有していることがわかり,広範な波長を測定できると同時にさまざまな対象物を非破壊で測定できることが示唆された。

次に,6種類の樹脂片(繊維強化プラスチック,アクリル,エポキシガラス,ナイロン6,ポリカーボネート,硬質塩化ビニル)を対象に,可視光~近赤外領域のHSIを取得した。その結果,各スペクトルの1000nm以上の波長帯において,分子振動由来の吸収特性が現れていることがわかった。

これらのデータとニューラルネットワークを組み合わせ,6種類の樹脂片の分類試験を行なった。可視領域(490~652nm)のスペクトルデータを用いた分類試験では,誤分類が多く,再現率は22.1%だった。近赤外領域(652~1000nm)のスペクトルデータを用いた分類試験でも,同様の誤認識が見られ,再現率は37.4%だった。

一方で,全領域(490~1600nm)と1000nm以上の領域(1000~1600nm)のスペクトルデータを用いた分類試験では,誤分類がほとんどなく,それぞれの精度は99.3%と99.6%,再現率が90.1%と93.7%,特異度が98.5%と99.1%だった。

研究グループは,硬性内視鏡を用いた生体深部組織の分光分析や有機物質分析技術の進展が期待されるとしている。

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