新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,経済安全保障を強化・推進する観点から支援対象とすべき先端的な重要技術の研究開発を進める「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称“K Program”)」の一環で実施する研究開発として,高効率・高品質レーザー加工技術の開発に着手すると発表した(ニュースリリース)。
このプログラムでは,NEDOに造成された基金により,国が定める研究開発ビジョンや研究開発構想に基づき,科学技術の多義性を踏まえ,民生利用のみならず公的利用につながる研究開発とその成果の活用を推進する。
このプログラムの支援対象のうち,領域横断・サイバー空間領域の要素技術の一つに「高効率・高品質なレーザー加工技術」がある。
将来のものづくり現場では,デジタル制御と親和性の高いレーザー加工の重要性が一層増すと同時に,ものづくり機器のクラウド連携や知能化が進むと考えられ,これらを融合したレーザー加工システムが期待されている。
レーザー加工システムの性能に直結するレーザー技術の向上・革新は,加工分野にとどまらず,医療分野,通信分野,自動運転などに向けたセンシング分野などに幅広く応用できる。
このような背景の下,NEDOは高効率・高品質レーザー加工技術の開発を公募し,2テーマを採択した。この事業では,高出力ファイバーレーザーの開発,高品質・高出力な半導体レーザーの高輝度・高出力化技術の確立に向けた調査研究を実施する。
今回の採択テーマおよび実施予定先は以下の通り。
①採択テーマ:高出力ファイバーレーザー
実施予定先:川崎重工業
予算:44億円
実施期間:2024年4月~2028年12月(予定)
非線形光学現象で発生する特定の波長のレーザー光のみを高出力領域で選択的に除去,低減できるPBGFの開発を行ない,並行して高出力シングルモードファイバーレーザー(SM-FL)の新たな用途を開発する。これにより,高出力SM-FLおよび自由度の高いファイバーレーザー加工システムの実現につなげる。
②採択テーマ:高品質・高出力な半導体レーザー
実施予定先:京都大学
予算:2億円
実施期間:2024年4月~2025年3月(予定)
デジタル化による自動的かつ効率的なものづくりを実現するためには,小型・軽量な半導体レーザーで,既存の大型レーザーと同等の輝度・出力を実現できる技術が必要。国内外先端技術の調査研究,需要調査とともに,レーザー加工分野以外への展開に向けた技術開発の方向性を検討し,他分野への展開も含め,レーザーの目標スペックを明確にする。