東京理科大学とユーグレナは,鰹出汁と強い赤色光照射を用いた培養によって,ユーグレナの顕著な赤色化が促進され,赤色化した細胞には,ジアジノキサンチンをはじめとするカロテノイド類が存在することを明らかにした(ニュースリリース)。
ユーグレナの含有成分の一つであるジアトキサンチンをはじめとするカロテノイドは,継続摂取により血糖値の上昇が抑制されることなどが報告されている。しかし,これまで,ユーグレナのカロテノイド生産効率を向上させるための手法についてはあまり研究がなされてこなかった。
研究グループは,これまでの知見を踏まえ,適切な光条件下で食品の栄養素を含む培地で培養することで,ユーグレナのカロテノイド含量を増加させることができるのではと仮説を立て,栄養素が豊富な鰹出汁を含む培地で光条件をコントロールした実験を行なった。
培地の組成,照射光の波長,光量の3つの観点から,ユーグレナ細胞の赤色化を促す適切な条件を探索した。具体的には,培地は独立栄養培地であるCM培地,従属栄養培地であるKH培地に加え,鰹出汁からなるBS培地を作成し,紫外(365nm)から赤色(660nm)までの単色光または白色光を,光量を変えて照射し,ユーグレナ細胞の赤色化および増殖について調べた。
その結果,強い赤色光照射(605~660nm,1000~1300μ mol photons/m2/s)を照射し,BS培地で培養した場合,最もユーグレナの赤色化が進むことが明らかになった。
赤色化した細胞懸濁液の物質構造を分析するため懸濁液に光を照射し,その吸収スペクトルを測定した結果,ユーグレナはCM培地よりもBS培地でより多くの種類または量のカロテノイドを産生していることが示唆された。
赤色化した細胞サンプルでは,これまで報告されている通り,ジアジノキサンチンがカロテノイドの中で最も高い割合を占めること,および,通常の培養条件下では生成されない未同定のカロテノイドが合成され,C=O(カルボニル)結合を含むことが示唆された。
また,白色光照射条件下のBS培地では,細胞の赤色化は観察されず,ユーグレナの良好な増殖が確認された。
研究グループは,今回の培養方法は遺伝子組換えを伴わないことから,食品利用を含む工業的応用が可能であるとしている。