米カーネギー研究所らは,すばる望遠鏡を含む大型望遠鏡を用いた観測により,太陽系の外側にある2つの氷惑星,天王星と海王星の周りで,3つの衛星を新たに発見した。そのうちの1つは,地上の望遠鏡で発見された中では最も暗い衛星で,すばる望遠鏡によって初めて捉えられた(ニュースリリース)。
今回の天王星の新衛星(S/2023 U1)の発見により,天王星を周回する衛星の総数は28個となった。S/2023 U1は,2023年にチリのマゼラン望遠鏡で発見され,その後,すばる望遠鏡とマゼラン望遠鏡で 2021年に撮影された画像に写っていたことが確認された。直径わずか8kmと,天王星の衛星の中で最も小さく,公転周期は680日。
海王星の新衛星のうち,明るい方(S/2002 N5)は,直径約23km,公転周期は約9年。この衛星はチリのマゼラン望遠鏡によって2021年に発見され,その後,2022年と2023年の同望遠鏡による追観測で軌道が確認された。その軌道をたどり,2002年に観測されたあとで見失われていた天体であることが判明した。
もう1つの海王星の新衛星(S/2021 N1)は,直径が約14km,公転周期は約27年。この非常に暗い天体は,2021年にすばる望遠鏡で初めて発見され,その後,チリのVLT望遠鏡とハワイのジェミニ望遠鏡での特別な観測時間によって軌道が決定された。これら2つの新衛星の発見により,海王星の既知の衛星は16個になった。
新たに発見された3つの衛星は,惑星から遠く,楕円形で傾いた軌道を持つ。これは,天王星と海王星が幼少期の太陽を取り囲む塵の円盤から形成された直後に,これらの衛星が惑星の重力によって捕獲されたことを示唆している。
新衛星達はまた,木星や土星の外側の衛星と同様に,天王星と海王星の外側の衛星の中には,似た軌道を持つグループが存在することを示している。このグループは,過去に大きな衛星が彗星や小惑星との衝突によって破壊され,元の衛星と似た軌道に破片が残されたことを示唆している。
海王星の向こうにある未知の惑星を探査している研究グループは,これらの外側の衛星がどのように捕獲されたかを理解することで,太陽系初期の歴史と,外縁領域における惑星移動に関する新たな知見が得られることを期待しているとしている。