北大,光触媒を用いた実用的な還元的環化反応を開発

著者: 梅村 舞香

北海道大学の研究グループは,光触媒とコバルト触媒を組み合わせ,アルキンとアルデヒドをもつ原料を還元的環化させることに成功した(ニュースリリース)。

環状アルコールは多くの医薬品の構造にも含まれる重要な骨格で,アルキナールの還元的環化反応はこの分子骨格を効率よく合成する方法の一つ。

しかし,従来から知られているニッケル触媒を用いた反応では,触媒反応として進行させるためには過剰量のアルキル亜鉛化合物やアルキルホウ素化合物の添加を必要とし,これらの試薬から発生する廃棄物が問題だった。

また,これらの触媒や添加剤は,酸素や湿気を取り除いた環境下で取り扱う必要があるうえに,合成可能な環状アルコールの種類も限られており,改善の余地を残していた。これらの背景のもとこの研究では,光エネルギーとコバルト触媒を用いた簡便でクリーンな代替法の開発を目指した。

4CzIPN(光触媒),CoCl2-L(コバルト触媒),トリエチルアミン,水の存在下でアルキナールに可視光(440nm)を照射して反応条件を精査した。最適な条件を見出した後,様々なアルキナールに対して本反応を適用した。重水素化実験,電気化学測定,蛍光分光法による滴定実験で反応メカニズムを推定した。

研究グループは,反応条件の検討の結果,まず目的の5員環アルコールを得る条件を見出した。この最適反応条件を用いることで,多様な環構造をもつ6員環,7員環アルコールの合成にも成功した。

この反応の添加剤は,必要最低限のトリエチルアミンと共溶媒の水のみであり,ニッケルを用いた従来法と比べて廃棄物を大幅に削減できた。

またこの水を添加した条件は,アセタール化合物を反応系内でアルデヒドに変換できるため,アルキナールを合成・単離することなく目的の環状アルコールが合成できる。

アルキナールはアルデヒド部分が酸素に弱く長期保存が困難であるため,より安定なアセタールを原料にできる点も優れている。さらに反応収率を落とすことなく,コバルト触媒の量を当初の10分の1まで低減できた。

研究グループは,現時点ではLEDの光を利用しているが,太陽光を利用する光触媒や発電技術の発展とともに,将来的にさらにクリーンな合成技術へと発展することが期待されるとしている。

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