東大ら,集光ミラー光学系で軟X線のナノ集光を実現

東京大学,理化学研究所,高輝度光科学研究センターは,コンパクトな集光ミラー光学系の開発によって従来に無いナノ集光と蛍光顕微鏡観察を実現した(ニュースリリース)。

軟X線領域では走査型顕微鏡が用いられており,X線集光素子が重要。理想的な集光素子はX線集光ミラーだが,反射面には原子レベルの誤差(1nm程度)しか許されない。作製精度の厳しい要求が障壁となり,従来の軟X線用の集光ミラーは理論的性能から程遠いものだった。

研究グループは,作製技術を改善する従来戦略に加え,集光ミラーの設計そのものも刷新した。作製精度が低い集光ミラーは,ミラー表面の凹凸でX線を散らしてしまい,本来狙うべき集光点にX線を集められていない。

しかし,ダーツの的が近ければ中心点に当てやすいように,仮に標的となる集光点が極限まで集光ミラーに近ければ,多少X線の反射方向がズレてもX線は微小点に収まる。つまり,理論的性能を達成しやすくなる。

しかし,X線集光ミラーは斜入射配置が必要。従来,最長1mにまで到達する長い集光ミラーでは,ミラー本体が邪魔で,集光点を近づけられない。そこで,従来設計の真逆を行く,ミラー長を最短2mmとして50倍急峻な形をした集光ミラーを考案し,超小型集光ミラーを設計した。

この設計を実現するには,急峻な形を原子レベルの誤差(1nm程度)で実現する作製技術が新たに必要。5年にわたり,加工・計測法を開発し,軟X線全域で回折限界集光可能な超小型集光ミラーを作製した。

大型放射光施設SPring-8で,超小型集光ミラーを評価した結果,光子エネルギー2keV(波長0.62nm)の軟X線で鉛直20.4nm・水平40.7nmの集光サイズを記録した。鉛直方向は回折限界に到達しており,作製精度の厳しい要求を満たしている。

超精密小型ミラーによって,新しい透視観察法が高解像度で可能になる。例えば,2色のX線を同時に試料に集め,発生頻度が少ない軟X線域の蛍光発光を引き起こす。

試料として化学固定した神経細胞を使用し,蛍光発光と吸収X線を同時計測して元素分析を行なった。最小100nm空間分解能で,細胞に不可欠な元素の量や濃度が定量分析できることを示した。この手法が唯一,高分解能でこれらの情報を一括で取得できる分析手法になるという。

研究グループは,細胞中で新薬が到達する場所が可視化できる等,生物学・薬学・物理学での貢献が期待されるほか,ラボベースのX線光源と組み合わせれば,X線ナノ分析を一研究室で行なえる可能性があるとしている。

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