京大,光エネルギーでハロゲン化アルキルを合成

京都大学の研究グループは,光エネルギーを用いて医薬品や機能性材料およびその合成中間体と知られているハロゲン化アルキルを温和な条件で合成することに成功した(ニュースリリース)。

ハロゲン化アルキルは,医薬品や機能性材料として我々の暮らしを支えている有機分子の一つ。ハロゲン化アルキルを合成する方法として,アルケンにハロゲン化水素を付加させるヒドロハロゲン化反応が知られている。

この反応では,ハロゲン化水素がアルケンをプロトン化し,生成したカルボカチオンとハロゲン化物イオンが反応することでハロゲン化アルキルを与える。

ハロゲン化水素のもつ高い酸性度はアルケンのプロトン化に必須である一方で,酸性条件で分解してしまう官能基を共存させることができず,供給できるハロゲン化アルキルの骨格を制限していた。

研究グループは,青色LED照射下,光酸化還元触媒とコバルト触媒を組み合わせることで,弱酸であるコリジン臭化水素酸を用いたアルケンのヒドロ臭素化反応が進行することを見出した。

この手法の成功の鍵は,光酸化還元触媒による一電子移動を,コバルト触媒を介したプロトンの一電子還元と臭化物アニオンの一電子酸化に活用することで,素原子(ラジカル)等価体と臭素原子(ラジカル)等価体としてアルケンに導入したこと。

アルケンをプロトン化する必要がないため,弱酸であるコリジン臭化水素酸を水素および臭素原子源として利用することができ,反応条件の温和化に成功した。

この手法では,コリジン臭化水素酸が弱酸性であるため,強酸性条件で分解してしまう官能基がアルケン基質に含まれていても,官能基を損なうことなく臭化アルキルを与えた。

ロテノンをはじめとした医薬品や天然物に含まれるアルケンもヒドロ臭素化反応に適用できた。用いるコリジンハロゲン化水素酸のハロゲン原子を変更するだけで,フッ素化,塩素化,ヨウ素化に拡張することができ,幅広いハロゲン化アルキルを合成できる。

この手法で使用するコリジンハロゲン化水素酸は安価なコリジンと対応するハロゲン化水素から容易に調製することが可能。

研究グループは,この研究により供給できるハロゲン化アルキルが拡張され,医薬品や機能性材料の迅速かつ高効率合成に繋がることが期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 静岡大ら,珪藻光化学のタンパク質間相互作用を解明 2024年11月07日
  • 東工大,分子の自発配向を利用した分極薄膜を開発 2024年10月31日
  • 東京科学大,光電子機能を持つ有機薄膜を開発 2024年10月03日
  • 岐阜大ら,光で切断できるマイクロ繊維を開発 2024年09月12日
  • 公大,光や熱で制御可能なスイッチング分子を開発 2024年09月10日
  • 東北大,次世代エポキシ樹脂の力学・光学特性を解明
    東北大,次世代エポキシ樹脂の力学・光学特性を解明 2024年08月30日
  • 岐阜薬科大,可視光で制御可能なケージド化合物開発 2024年08月22日
  • 京大ら,高プロトン伝導性で化学的に安定なCOF形成 2024年08月19日