岐阜大学,ソフトバンク,情報通信研究機構(NICT),名古屋工業大学は,Beyond 5G/6G時代を見据え,障害物による電波の遮蔽に強い300GHz帯テラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより実証した(ニュースリリース)。
近年,無線通信の高速化・大容量化の要求によって,100Gb/s以上の伝送速度を実現するBeyond 5G/6G技術に関する研究開発が世界的に盛んに進められている。
300GHz帯は,5Gで利用が進む28GHz帯(マイクロ波帯)と比べて,より広い周波数帯域が利用可能なため,超高速無線システムの候補として期待されており,現在の光ファイバーによる通信を補完する通信としての利用が検討されている。
一方で,300GHz帯は28GHz帯と比べて波長が1桁以上短いため,ビームの広がり角は1桁以上小さく,ビーム径が細くなる。例えば,28GHz帯で第1フレネルゾーンのおよそ5%を遮蔽する大きさの障害物は,300GHz帯の第1フレネルゾーンのおよそ50%を遮蔽することになり,この遮蔽によって受信パワーは6dB程度減少することになる。
フロントホール/バックホール用途の見通し固定無線通信では,近傍のシステムとの周波数共用が図りやすい一方,狭いビーム断面を鳥などの障害物が横切ると通信エラーが発生し,場合によっては通信が切断されてしまうことが懸念される。
今回研究グループは,300GHz帯においてベッセルビームを生成し,ベッセルビーム断面内に設置された障害物により乱されたビーム形状が,伝搬とともに自己修復することと,通常のガウスビームと比べて障害物による通信エラーの発生が少なくなることを実験的に確認した。
具体的には,ガウスビームが障害物の配置により受信パワーが極端に小さくなるのに対し,自己修復性を有するベッセルビームの場合,パワー低下が小さいことを実験により確認した。
ガウスビームの場合,障害物がビームの中心に近づくほどビット誤り率は高くなり,場合により通信が切断された一方,ベッセルビームの場合,障害物の位置によらず通信は維持されることを確認した。
自己修復ビームにより,障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線通信路が形成可能であることを示したこの成果について研究グループは,これまでテラヘルツ無線の大きな弱点であるとされてきた,障害物によるビーム遮蔽に脆弱であるという問題を解決し,Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信の実用化への重要な一歩だとしている。