産業技術総合研究所(産総研),大阪大学,TDKは,メタサーフェス反射板のテラヘルツ帯評価装置を開発した(ニュースリリース)。
テラヘルツ帯を利用するポスト5G/6Gでは,障害物の遮蔽効果による通信エリアの制限が実現の妨げとなっている。その中で,電磁波を特定の方向に反射できるメタサーフェス反射板を用いた通信エリアの拡大技術の研究が進んでいる。
しかし,テラヘルツ帯では,反射板のサイズが波長に比べて極めて大きくなり,必要な伝送距離は数十mにも達するため,実使用と同等の条件下でのメタサーフェス反射板の性能評価は困難だった。
開発した装置は,パラボラ鏡,楕円鏡とその背後にあるフィード用のアンテナから成るオフセットグレゴリアンアンテナの構成により,疑似平面波を生成する。生成した疑似平面波を反射板サンプルに照射することで,最大330GHzの広帯域にわたって,平面波照射下での反射特性評価ができる。
アンテナ放射電界の振幅と位相の分布計測結果から得られる,疑似平面波のビームサイズは直径が約250mmに達し,大型の反射板サンプルの評価が可能となる。
サンプルに照射されるビームが平面波ではなく不均一な位相分布をもつ場合,実使用と同等の反射性能を正確に評価できない。この装置と同等の疑似平面波を一般のコルゲートホーンアンテナを使用して生成するには,アンテナと反射板サンプル間の距離は30m以上必要と試算されるが,この装置ではオフセットグレゴリアンアンテナとサンプル間の距離は約0.9mで実現できた。
この装置を活用して,6Gで利用が想定される220GHzと293GHzで動作するデュアルバンドメタサーフェス反射板を開発し,その実証試験を行なった。開発したデュアルバンドメタサーフェス反射板は,誘電体基板表面に形成した金属周期構造を最適化し,高次の回折モードを制御することで,2周波数で同じ方向に高効率で反射するデュアルバンド異常反射動作を実現した。
テラヘルツ帯での動作を担保するため,金属周期構造の試作誤差は4μm以下に抑えている。入射角0°,反射角45°で設計した試作品に対し,この装置を用いて反射電力比の角度依存性を試験したところ,220GHzと293GHzの両周波数帯において,所望の方向への強い反射が見られるなど実用に資する高効率動作を確認した。
研究グループは,今後は,この装置による高精度な反射板評価技術を活用して,メタサーフェス反射板のさらなる高機能化や高効率化を推進し,ポスト5G/6Gの通信エリアを基地局の増設なしに柔軟に拡大する技術基盤の確立を目指すとしている。