富士フイルムは,最先端の光学技術・画像処理技術・AIによってトンネル点検業務の効率化を実現する「トンネル点検 DXソリューション」の提供を10月17日より開始したと発表した(ニュースリリース)。
近年,重要なインフラの一つであるトンネルの老朽化が進行し,社会課題として顕在化している。なかでも,水力発電所の水路トンネルは,内部に照明設備が無い,数百m~数kmの長さのトンネルを5~6名の熟練者が主に目視で点検していることから,点検業務に大きな負担を伴っている。
また,人手による点検では,ひび割れの進行などを確認することが困難であり,その結果,事後保全になってしまうため補修コストが増大する。
このソリューションは,最新世代のイメージセンサーを搭載したデジタルカメラを使用し,暗いトンネル内でも解像度が高い画像を得られるシステムを貸与する。タブレット上で複数のカメラを同時に制御し,効率的にトンネル内を撮影することができるという。
また,同社のインフラ画像診断サービスで培った画像処理技術を用いて大量の画像データを高速で自動合成し,トンネルの高精細な画像展開図を作成。AIでひび割れを自動検出し,専用ビューア上に表示する。
さらに,展開図をスムーズに拡大/縮小したり,位置情報やメモを追記することもできる。点検者はオフィスにいながら展開図を使って点検できるため,トンネルの健全度をストレス無く正確に把握できる。点検に使用したデータはクラウド上に長期保管。専用ビューアに過去の点検結果も表示することで,経時による差分比較が容易だという。
同社は,このソリューションを活用することで,現地での作業を3名(熟練技能者1名・撮影作業員2名)程度で実施でき,3kmのトンネルの画像展開図を作成するのに,手作業で行なった場合は数か月を要するが,自動合成により約1週間で完了できるとする。
従来の事後保全から,トンネルの健全度を正確に把握して適切な修繕計画立案する予防保全へ転換することで,設備の延命やライフサイクルコストの削減が実現できるという。
同社は,この製品の機能強化を進め,このソリューションの対象を,水力発電所などの水路トンネルから,鉄道や道路のトンネルまで広げていくとしている。