日本電信電話(NTT)と東京電機大学は,電気光学変調ベース光周波数コムのさらなる安定化に成功した(ニュースリリース)。
光周波数コムは,周波数軸上でくし(コム)状の輝線スペクトルを持ち,光の周波数計測や光からマイクロ波への精密な周波数変換などに利用される。
光コムの周波数間隔をfrep,光コムの周波数間隔を仮想的に0まで掃引したときに0からもっとも近い周波数(キャリアエンベロープオフセット周波数:CEO周波数)をfceoと定義すると,光コムの周波数fnは自然数nを用いて,fn=fceo+n×frepと記述できる。
周波数が安定化された光コムは,ファイバーコムやチタンサファイアレーザーを用いて実現されてきたが,これらの光コムの典型的な周波数間隔(frep)は数十~数百MHzであり,コムモード一本一本を個別に分離・制御できないため,光通信への応用は困難だった。
そこで研究グループは,電気光学変調器(EO変調器)に種光源となるCWレーザーを入力して発生させる光コム(EOコム)を研究してきた。EOコムは周波数間隔が数十GHz程度と大きく,コムモードの分離・制御が可能。
また,EO変調器に印加するマイクロ波周波数を選ぶことで周波数間隔が容易に変えられる。一方で,EOコムは周波数軸上で種光源から離れるにつれてマイクロ波のノイズが重畳し,周波数が不安定になる問題がある。周波数の安定化には従来,周波数の異なる2つのレーザーを用いていだが,レーザー間での周波数ドリフトの問題があった。
EOコムでは1パルスあたりのエネルギーが小さく,通常長い高非線形性ファイバーを用いて広帯域な光コムを発生させるが,この方法だと光コムのSN比が小さくなり,CEO周波数の検出が難しくなる。今回,7台の位相変調器を用いてサイドバンドを広げた後に,短い高非線形性ファイバーを用いることで,広帯域でSN比の高いEOコムを生成した。
さらに今回の2f-3f自己参照干渉法では,光コムを周波数fから3f/2まで広帯域化し,周波数fの3倍波と周波数3f/2の2倍波を生成し,周波数が3f付近での干渉信号を取ることで,CEO周波数を検出するために必要な光コムの帯域幅を低減した。研究グループでは,NTT独自のデュアルピッチPPLN導波路を用いた2f-3f自己参照干渉法を利用した。
今回,研究グループはレーザー1台を種光源として利用してCEO周波数を検出し,その値が一定となるようにEO変調器に印加するマイクロ波周波数へフィードバックすることで,EOコムのさらなる安定化に成功。次世代の高速・大容量な光通信への応用が期待される成果だとしている。