東京医科歯科大学の研究グループは,オートファジー進行度を可視化できる蛍光試薬を開発した(ニュースリリース)。
オートファジーは,飢餓や様々なストレスに応じて細胞が自身の成分の一部を分解する機構。飢餓の際には,余剰な細胞成分を分解して栄養源にし,細胞がダメージを受けて損傷した際には損傷個所の分解などに関わる。
GOMEDも,オートファジーと同様に細胞自身の一部を分解する機構だが,オートファジーとは実行分子や分解する対象が異なり,生体内では異なる役割を担う。
オートファジーやGOMEDが進行する時,その初期から中期において,分解対象を隔離膜とよばれる膜で包み込こんで隔離する。その後,後期にかけて,この隔離された構造体(オートファゴソーム)とリソソームが融合して,分解対象物がリソソーム酵素によって分解される。
オートファジーやGOMEDの多寡を評価するためには,進行過程の各ステップの定量的な評価が必要であり,オートファジーに関しては,LC3と呼ばれる分子を蛍光で可視化して,その動態観察により解析を行なえる。
ただし,この解析のためには遺伝子操作が必要で,生体での研究は困難だった。また,GOMEDは,これまで適切な評価法がなかった。そこで,遺伝子導入を必要とせずに,オートファジーやGOMEDの多寡を評価できる測定法の構築を目指した。
研究グループは,オートファジーを標識可能なDAPGreen,DAPRed,DALGreenの三種の蛍光試薬を開発した。これらの蛍光試薬がオートファジーの進行する中で,どのステージから標識することが可能かを詳細に調べた結果,試薬によって異なるステージから標識できることを明らかにした。
DAPGreenは緑色の蛍光でオートファジーの最初期から全ての構造を標識するのに対し,DAPRedはDAPGreenよりも中期寄りのステージの構造を赤色の蛍光で標識できる。DAPGreenとDAPRedを併せて使用することでオートファジー初期の構造を緑色単色で,以降の構造を赤色・緑色の混合色で検出できた。
さらに,DALGreenでは緑色の蛍光でオートファジー後期の構造だけが標識されており,DAPRedとDALGreenを併用することで中期の構造を赤色で,後期の構造を赤色・緑色の混合色で検出できることを示した。また,GOMEDにおいても,同様に進行ダイナミクスを評価できること,生きたゼブラフィッシュの生体内のオートファジー活性も可視化・評価できることを見出した。
研究グループは,遺伝子操作をせずに,疾患とオートファジーとの関連性を明らかにできる成果だとしている。