東北大学の研究グループは,3次元可視化計測と音響計測を同時に行ない,両者の関係を線形に結びつけることで,空間解像度と時間解像度を大幅に拡張できる3次元時空間超解像計測技術を開発した(ニュースリリース)。
ロケットや超音速ジェット機のエンジンから排出されるジェットは,騒音問題や構造物破壊の原因となっている。ジェット騒音の発生メカニズムは流体現象と密接に関係があるため,超音速ジェットの物理現象を詳細に理解する必要がある。
超音速ジェット騒音は複雑かつ時速1000kmを超える極めて速い流れから発生する。3次元背景型シュリーレン法(3D-BOS)は複雑な3次元流体現象を詳細に把握できる可視化手法だが,最新鋭の高速度カメラでも,超音速噴流の流体現象を十分な撮影速度で撮影することは困難だった。
先行研究の時空間超解像計測は超音速ジェット騒音に関連する流体現象を高空間かつ高時間解像度で計測できる。しかし,この技術は2次元での計測のため,3次元性が強いジェット騒音への適用は限界があった。
今回研究グループは,3次元可視化手法である3D-BOS計測と音響計測を同時に行ない,データ駆動科学技術である線形モデルを両者のデータに適用することで,空間解像度の大幅な拡張や撮影速度の向上を実現できる3次元時空間超解像技術を開発した。
実験は,7台の高速カメラと光源として7個LEDを使用した。音響計測では8個のマイクロフォンをノズル付近に設置し,ジェット騒音を計測した。
この技術は,200kHz(5μs時間間隔)で計測した音響データから流体場を再構成することができ,3D-BOS計測のみの場合の40倍(3D-BOS計測の撮影速度は5kHz)となる200kHzの撮影速度で超音速ジェット騒音に関連する流体構造を計測できる。さらに,音響データから3次元流体構造を再構成できる。
これにより,音速より1.2倍速い超音速ジェット(1+2モード)では時計回りのらせん構造(1モード)と反時計回りのらせん構造(2モード)より形成されることを初めて可視化した。
また,超音速ジェット(1+2モード)の流体構造とその強さが時間によって変化することを初めて可視化し,らせん構造の時間変化のメカニズムを解き明かした。
これより,点センサから3次元流体構造を推定し,その結果を基に超音速ジェット騒音に関連する流体構造を詳細に理解することで,騒音低減デバイスの性能向上などにつながる可能性があるという。
研究グループは,様々な流体分野にこの技術を適用することで,極限的な条件での流体現象の理解を飛翔的に発展できるとしている。