農工大,傾いた状態での固体粒子膜の生成に知見

東京農工大学の研究グループは,水と空気の境目を傾けた状態で分散液を乾かすシンプルな実験で,・粒子膜の成長速度が場所によって変わる,・粒子膜が十分な長さに成長すると場所ごとの成長速度に差はなくなる,ことを明らかにした(ニュースリリース)。

小さな微粒子が含まれる水を塗って乾かすと,微粒子が集まった固体薄膜が得られる。電池電極をはじめ薄膜を作る実用操作として塗布乾燥は広く使われている。その一方で,微粒子がいつ充填されるのかなど蒸発中の塗布液の中で何が起きているのかは,学術として未解明点が多く残っている。

例えば,ものづくりでは塗布した液膜と空気の境目(界面)が傾いたまま乾くことが多いが,この場合に一様な粒子膜成長が起こるのかについての検討例がなく,詳細は不明だった。

シリカ(SiO2)粒子(直径330nm)が分散した水溶液を手製のガラスセルに入れ,水と空気の境目の角度が異なる条件で乾燥させると,角度90°の場合は場所によらずほぼ均一に粒子膜が成長するのに対し,角度45°の場合は位置によって長さが異なる粒子膜が成長することを明らかにした。

角度や乾燥条件を変えて検証した結果,成長速度の差は,粒子膜がなす角度θを用いたcosθに比例するシンプルな関係にあることを突き止めた。複雑な現象であるにもかかわらず単純な関係式で表現できることは驚くべき点だとする。

さらに,この結果を用いた数理モデルが,実験データを定量的に再現よく表現できることを示した。水と空気の境目が傾いた状態で粒子膜がどのように成長するかを直接観察した結果は,複雑な粒子充填現象の実験データとしても貴重だという。

実際のものづくりでは空気と塗布液の境目が傾いている例が多数あるが,今回の成果は,そうした場では「均一な」粒子膜の成長を行なうことが難しいことを示している。

研究グループは,粒子膜の成長だけではなく,蒸発に由来する分散液の流れも詳細に解析すれば,これまで十分に制御出来なかった粒子膜の成長を精密に制御する技術開発につながることが期待されるとしている。

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