北大,生体に近い血管模型を3Dプリンターで作成

北海道大学の研究グループは,生体血管に近い血管模型を3Dプリンターから直接作成することに成功した(ニュースリリース)。

3Dプリンターには様々な構造の形状を容易に再現できる特性があるが,滑りや弾性などの機械的特性も含めて,生体血管に類似した血管模型を3Dプリンターから直接作製したという報告はなかった。この研究は,その実現を目指して,3Dプリントした透明・柔軟な光硬化樹脂(レジン)の機械的特性(弾性率・粘着性・透明性・動摩擦係数)を豚動脈血管と比較検討した。

樹脂板は3Dプリンターを用いて樹脂から作製し,豚の動脈板は,動脈を切除して作製した。樹脂板の各硬化時間は0,1,3,5,10分とした。樹脂板と動脈プレートに対して,引張圧縮試験機を用いて,引張試験を行ない弾性率を計測し,更にカテーテル先端素材であるポリエチレン板に対しての樹脂板及び血管内腔表面の接着強度を測定した。

また,樹脂板の硬化時間毎に樹脂の透明度を紫外可視分光光度計で測定した。そして,シリコンコーティングの効果を見るためにシリコーンスプレーを1〜5秒間塗布した樹脂板表面の動摩擦係数と動脈内腔面の動摩擦係数を測定し比較した。

比較の結果,弾性率は樹脂の硬化時間に関わらず,樹脂板では動脈と比較して有意に高く,樹脂の硬さが示された。樹脂の可視光線透過率および接着強度は,樹脂の硬化時間の増加とともに減少した。従って,樹脂の硬化時間を短く設定することで,透明性を保ったまま粘着性を低下させることができる。

また,シリコンコーティングした樹脂表面の動摩擦係数は,シリコーン層の膜厚が1.6-2μmの場合に動脈と同程度であったため,この数値を目安にしてコーティングを行なうのがよいということが分かった。シリコンコーティングは樹脂に生体動脈と同等の滑りを付与する重要なプロセスとなる。

今回,報告した素材・作製方法を用いれば,形状のみならず,滑りや弾性などの機械的特性も含めて生体血管に近い血管模型を3Dプリンターから直接作製できる。研究グループは,この血管模型の作製法は高難度医療技術であるカテーテル治療のシミュレーションへの貢献が期待できるとしている。

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