パナソニックと東北大学は,通信事業者の基地局装置間(収容局舎とアンテナサイトの各基地局装置)の光伝送通信を行う光フロントホール(光FH)において,伝送効率を向上させる光・無線統合制御技術を開発した(ニュースリリース)。
5Gの移動通信システムは,中枢でさまざまな制御を行なうコアネットワーク(CN),基地局およびアンテナ等で構成される無線アクセスネットワーク(RAN),通信端末で構成される。
このRAN構成において,収容局舎とアンテナサイト間の基地局装置間の通信は光フロントホール(FH)で光伝送される。光FHは無線通信の大容量化に伴いトラヒックが増大するのに加え,RAN構成によってもトラヒックが増大する。
特にvDUを収容局舎側に配置するC-RAN構成では,多数のRUを協調させて制御することでセル境界に存在する端末の通信品質を改善することが可能となる一方で,D-RAN構成と比較して光FHのトラヒック量が大きくなるため光FHを逼迫させる可能性がある。そのため,この光FHのトラヒックをいかに効率的に伝送するかが課題となる。
この課題に対して,研究グループはRAN構成に応じて光FH伝送方式を変えることで光FHの伝送効率を向上させる光・無線統合制御技術を考案した。従来,光区間および無線区間で発生する誤りに対して個別に適用していた誤り訂正技術を,C-RAN構成においては無線区間のみ適用するとともに,C-RAN構成においてvDUから伝送される無線のIQ信号を光のIQ信号に直接マッピングして光伝送することで,光FHのトラヒックの削減に成功した。
基地局装置および光伝送装置の出力データを用いて計算機シミュレーションにより評価したところ,提案方式は光区間の誤り訂正を適用しなくても低無線品質環境(低無線SNR領域)では無線スループットの劣化はなく,高無線品質環境(高無線SNR領域)においても4%程度の劣化に抑えることができた。
さらに光FHトラヒックに関して提案方式は,光区間の誤り訂正のために付加されるオーバーヘッドの削減に加えて,無線・光フォーマット変換に係るデジタル信号処理の削減により,従来に比べて光FHトラヒックを理論上最大67%削減できる見込みとする。研究グループは,光FHトラヒックの削減により,さらなる大容量通信が実現できるとしている。