東工大ら,可視光を吸収する酸化スズを合成

著者: sugi

東京工業大学,防衛大学校,三菱マテリアルは,酸化スズの新しい結晶多形である,直方晶の四酸化三スズ(Sn3O4)の合成に成功した(ニュースリリース)。

従来の光触媒である二酸化チタンは可視光を吸収できず,可視光を吸収できる材料は高価で毒性の問題もある。比較的安価で毒性が低く,安定な酸化物半導体の一つとしては二酸化スズ(SnO2)があるが,TiO2と同様に可視光を吸収することができない。

水熱法で合成できる混合原子価酸化物であるSn3O4は可視光応答型光触媒として機能することが確認されており,研究では反応条件を見直し,バンドギャップが狭く,励起電子の還元力の高い直方晶のSn3O4を合成した。

Sn3O4を合成するために,塩化スズ,クエン酸三ナトリウム,水酸化ナトリウムを水に溶解・混合した原料溶液を使用し,溶液占有率を変化させた水熱処理を行なった。溶液占有率40%以上では未知の回折ピークが現れ,反応容器の気相部分の酸素量が生成物の結晶構造に大きな影響を与えることがわかった。

この未知の回折パターンを照合したところ,未知の回折ピークは鉛を含むSnPb2O4に類似していたが,研究で合成した物質には鉛が含まれておらず,ICDDのデータベースには存在しない物質であった。

80%の溶液占有率で合成した試料について,走査透過型電子顕微鏡(STEM)とエネルギー分散型X線分析(EDS)で観察・分析を行なったところ,ロッド状の形状を有し,Sn3O4の結晶構造であることがわかった。化学組成分析でもSn/O比が3/4にほぼ一致し,顕著な不純物はなかった。第一原理計算によってもこの結晶構造が安定に存在することが示唆された。

第一原理計算で最適化した直方晶の結晶構造モデルに対し,Bader電荷分析とX線光電子分光法によってスズイオンの電荷分布や化学状態を解析したところ,研究で合成した物質は直方晶のSn3O4であって,スズイオンの価数を考慮した化学式はSn(II)2Sn(IV)O4と表されることが明らかになった。

さらに,直方晶Sn3O4は単斜晶Sn3O4よりもバンドギャップが小さく,より長波長の光(~620m)を吸収することができることが実験的に示された。直方晶Sn3O4においては,励起電子の高い還元力が示唆された。また,直方晶Sn3O4への可視光照射によって二酸化炭素を還元できることが確認され,光触媒として利用可能なことがわかった。

研究グループはこうした水熱法の知見について,これまでに報告例のない結晶多形や新物質の合成につながることも期待されるとしている。

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