大阪公立大学の研究グループは,人工光合成技術を活用し,廃棄アセトンの約70%を生分解性プラスチック原料である3-ヒドロキシ酪酸に変換することに成功した(ニュースリリース)。
生分解性プラスチックの中でも,水に不溶かつ強度のあるポリエステルとして包装材等によく使われているポリヒドロキシ酪酸は,3-ヒドロキシ酪酸を重合して得られる。研究グルプは以前の研究で,二酸化炭素とアセトンから高効率で3-ヒドロキシ酪酸を合成できることを報告している。
研究段階にある二酸化炭素を資源とする技術の多くは,出発原料として炭酸水素塩,炭酸塩または高純度の二酸化炭素が使用されている。これをより一層実用化へと近づけるためには,二酸化炭素の濃縮過程を経ずに,火力発電所や製鉄所等からの排ガスに含まれる数%~20%の低濃度二酸化炭素を直接利用することが経済的に望まれている。
また,アセトンは水および油との混和性が非常に優れているため,除光液や染み抜きなど日常的に使用する化学薬品や,実験器具の洗浄など広く用いられており,廃棄された大量のアセトンの再資源化も求められている。
研究グループでは,以前報告した3-ヒドロキシ酪酸を合成する人工光合成技術に,油性インクを処理した廃棄アセトンと,火力発電所等からの排ガス相当の低濃度二酸化炭素を出発原料とし,太陽光と同等の可視光を1日照射することで,アセトンの約70%を3-ヒドロキシ酪酸に変換することに成功した。
この成果は,二酸化炭素を削減するだけでなく,廃棄資源を再利用しながら生分解性プラスチックを作る革新的な方法となることが期待される。研究グループは今後,実際に実験室で出てくるアセトン廃液や排ガスを原料として利用できる人工光合成技術への展開を目指すとしている。