日本電信電話(NTT),東京大学,理化学研究所は,5Gに代表される最先端の商用光通信テクノロジーを光量子分野に適用させる新技術を開発。これにより,光通信用検出器を用いて世界最速の43GHzリアルタイム量子信号測定に成功した(ニュースリリース)。
従来の高速光通信デバイスのすべてを,そのまま光量子コンピュータに使うことはできない。例えば光通信用の100GHz超の高速なディテクタは光損失が大きく,この損失で光量子状態が崩壊してしまう。そのため従来は,光損失が少ない特別に設計された低速なディテクタを用いて測定を行なう必要があり,研究グループが開発したTHz帯域の量子光生成も,その帯域を十分に生かせていない。
今回,光パラメトリック増幅器により光量子情報を保持したまま光を増幅し,これまで適用できなかった超高速光通信テクノロジを光量子分野に適用する新手法を開発した。この技
術により,光通信テクノロジの高速・広帯域性を十分に活用したスーパー量子コンピュータ実現への道を拓いた。
今回はその一例として,光パラメトリック増幅後に市販の高速通信用ディテクタを用いて,高速に信号を測定する手法を提案した。この技術では,光量子状態を光損失の影響を受けない“古典的な”レベルまで増幅することで,光通信テクノロジを光量子分野に適用可能としている。
実験では,NTTの高い増幅率(約3,000倍)と小さい信号対雑音指数(約20%)を有する,直接接合型周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路による光パラメトリック増幅器を用いた。
光通信用43GHzディテクタとリアルタイムオシロスコープを用いて,スクイーズド光の振幅測定をしたところ,電圧振幅値のヒストグラムより,量子ノイズ圧縮率は約65%であることが分かった。
この結果は光量子コンピューティングの動作に必要最低限な量子ノイズ圧縮(60%)を超えており,従来技術と比べて1,000倍以上のクロック周波数で動作可能な高速な量子演算が実現できることを意味している。
今回の結果は,超高速光通信技術(5Gテクノロジ)と光量子コンピュータ技術の融合により100GHz超の帯域での高速な光量子演算が可能になることを示すもの。また,超高速光通信技術と光量子プロセッサを融合させることが可能になり,光量子コンピュータ開発が大きく加速する。
将来的には,光通信テクノロジの一つである波長分割多重化技術(WDM)を用いることで,量子プロセッサのマルチコア化が可能。研究グループは,今後これらの技術により,THzオーダーの帯域を最大限に活用した100GHz帯域100マルチコアのスーパー量子コンピュータを実現するとしている。