東京工科大学と東京農工大学は,がんなどのバイオマーカーとしての利用が期待される,ゲノムDNA中の種々の修飾塩基を簡便に検出できる発光タンパク質の構築法を開発した(ニュースリリース)。
ヒトゲノムDNAを構成するA,T,G,Cの4つの塩基は生命現象を制御するために種々の修飾を受ける。ヒトゲノムDNA中で最も多く含まれる修飾塩基は5-メチルシトシンであり,CとGの連続配列中のCがメチル化されることにより生じる(メチルCpG)。
さらに,5-メチルシトシンが連続的に酸化されることにより,5-ヒドロキシメチルシトシン,5-ホルミルシトシン,5-カルボキシシトシンが生成される。これら修飾状態は組織,細胞特異的に形成され,それら組織,細胞の機能を維持するために必須となる。
がんや中枢神経疾患などの疾患細胞においては,これら修飾塩基の状態が異常になっているため,種々の疾病のバイオマーカーとして利用できる。
研究では,室温で混合するだけで自発的に連結されるタンパク質である「SnoopTag(SnT)」と「SnoopCatcher(SnC)」を利用した。まず,メチルCpG結合タンパク質(MBD)にSnT(MBD-SnT),非メチルCpG結合タンパク質(CXXC)にSnT(CXXC-SnT),SnCに発光タンパク質(SnC-Luc)を融合した各種タンパク質を組換え生産した。これらをそれぞれ混合して室温で1時間静置したところ,自発的に連結されることが確認された。
次に,これら連結産物を用いて,ヒトゲノムDNA中のメチルCpGと非メチルCpGを測定できるかを検討した。発光タンパク質の発光で励起されるDNAインターカレーターを結合させたゲノムDNAに,MBD-SnT-SnC-LucまたはCXXC-SnT-SnC-Lucを添加し,さらに光タンパク質の発光基質を添加した。
その結果,MBD-SnT-SnC-LucはヒトゲノムDNA中のメチルCpG部位で,CXXC-SnT-SnC-Lucは非メチルCpG部位で発光し,近傍のDNAインターカレーターを励起することが示された。つまり,これら蛍光強度を測定することで,メチルCpGと非メチルCpGを測定できることが示された。
修飾塩基を認識するタンパク質にSnTを,発光タンパク質にSnCを融合させたタンパク質を調製すれば,それらを混合するだけで,任意の組合せの修飾塩基を認識する融合発光タンパク質を構築できることが示された。
研究グループはこのタンパク質により,ヒトゲノムDNA中の標的修飾塩基を簡便に測定し,これら修飾塩基状態が異常になる疾病の簡易診断が可能になるとしている。