矢野経済研究所は,日本を含む世界主要33市場(33カ国1地域)の携帯電話サービス契約数やスマートフォンやフィーチャーフォンの市場を調査し,通信事業者別契約数や各種の出荷台数を予測し,メーカーシェアなどを明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2021年の世界の携帯電話サービス契約数は82億8,496万契約だった。世界の最大市場である中国,インドの伸びが鈍化傾向にあり,先進国市場も米国を除き飽和状態にあるという。
一方,アフリカや中南米市場は増加を続けている。5Gサービスの導入が始まったものの,市場活性化の引き金にはなっておらず,世界の移動体通信サービスは依然として4G主体の構造となっている。
2022年における世界の携帯電話サービス契約数は前年比102.4%の84億8,424万契約に増加する見込みだとする。コロナ禍の継続,中国経済の失速,ロシアに拠るウクライナ侵攻などの要素が重なり,携帯電話サービス契約数実績は伸び悩んでいる。
2021年の世界のスマートフォン出荷台数は12億7,634万台だった。ASEANやインド,アフリカ向けのスマートフォン出荷台数が増加しているものの,最大市場である中国は市場の飽和や経済の伸び悩みにより大幅に減少したとする。コロナ禍,米中問題等の影響でサプライチェーンにも大きな影響が出ており,スマートフォン出荷台数は伸び悩んでいるという。
2022年における世界のスマートフォン出荷台数は前年比91.2%の11億6,466万台を見込む。2022年は前述の影響に加え,ウクライナ侵攻によるエネルギー供給の不安や物価高,中国でのゼロコロナ政策に拠る都市閉鎖の影響なども加わり,スマートフォン出荷台数は前年実績を下回る見通し。
2030年におけるスマートフォン出荷台数は15億5,000万台になると予測する。市場では5G対応製品に切り替わりが進み,2030年迄には市場に流通するスマートフォンは5G対応に全て切り替わっているだけでなく,6Gに対応した製品が出荷される見通しだという。
ロシアについては,ウクライナ侵攻における制裁措置の一環で,市場シェアトップのSAMSUNG,同2位のAppleがロシアの携帯端末市場から撤退している。また,Android OSを提供するGoogleやERICSSON,NOKIAといった携帯基地局メーカーもロシア市場から撤退している。
一方,中国メーカー各社はロシア市場への関与を継続しており,今後ロシア市場ではXiaomi,OPPO,vivo,HUAWEI,Honorといった中国メーカーが携帯端末市場を独占する可能性が高いという。
更にAndroid OSの使用が不可能となったことで,OSプラットフォームの再構築や5Gを含めた基地局供給についても中国メーカーの関与が強まることが想定され,ロシア市場は今後「中国化」する可能性が極めて高いとする。
今後の世界スマートフォン出荷台数は5G導入に拠る市場活性化が期待されるものの,中国,米国を含む一部の市場を除き導入の動きは鈍く,2025年迄は4G LTE網の整備が並行して行なわれる見通しだという。
但し,スマートフォンについては,先行して5G対応が進むとみる。2025年以降には5Gの進化系にあたる5G Evolutionに対応した製品が主流となる見込みで,2030年を目途に6Gに対応した製品が登場する見通しだとしている。