山形大学の研究グループは,少ロットから安価に生産可能な印刷パターニングによる有機EL表示パネルの開発を行っなてきた。今回,高級家電の表示部をターゲットの一つと考え,コーヒーメーカーのモックアップ試作を行なった(ニュースリリース)。
有機ELは,高い表示性能と高い設計・実装の自由度により,様々な用途への展開可能性を持つものの,既存の「蒸着型」有機ELは製造装置が数千億円規模に上り,少量多品種への対応が困難なため,現状は用途が限られている。
一方で,IoT技術が普及する中,ディスプレーのニーズは増しており,家電等にもインジケータ類が搭載されている。これらは省電力かつ視認性の高い有機ELの有望な市場であり,安価かつ少量・多品種に対応可能な技術が求められているという。
同大は,印刷型有機EL技術に加え,パネル化に必要な周辺技術においても印刷技術を保有している。低コストで少量多品種への対応が可能な「印刷型」有機EL表示パネルを達成するために,①印刷有機EL,②印刷配線・発光パターン形成,③印刷トランジスタの3つのキーテクノロジーの高度化を行なってきた。
さらに,事業プロモーターであるQBキャピタルと連携し,IoT化等による多品種へのニーズに対し,少量多品種生産が可能な印刷型有機ELパネルの製造販売を展開するベンチャーの設立を目指している。
今回,高級家電の表示部をターゲットの一つと捉え,コーヒーメーカーのモックアップを作製した。有機ELの持つ特長を活かした次世代コーヒーメーカー(Drop)をイメージしている。
コーヒーメーカーのデザインは,大阪芸術大学が担当した。作製した有機ELパネルは,印刷により発光エリアをパターニングしたエリア駆動のインジケータ。エリア駆動により,それぞれ個別に制御が可能となっている。発光色は,有機EL素子の発光層を変更することで,任意の発光色を得ることができる。将来的にはフレキシブル化も可能だとしている。