東北大ら,マヨラナニュートリノの発見に向け知見

東北大学,東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構らの国際研究グループのプロジェクトKamLAND-Zen(カムランド禅)は,反ニュートリノ検出器「カムランド」の観測により,マヨラナニュートリノが存在することで見える信号の崩壊半減期をこれまでより2倍以上の精度で予測し,マヨラナニュートリノの質量が,36-156meVより小さいことを示した(ニュースリリース)。

粒子・反粒子の区別がないマヨラナニュートリノは,「物質優勢宇宙の謎」の解明の手がかりであると考えられている。今回研究グループは,ニュートリノが電荷を持たない「マヨラナ粒子」かどうか検証する「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索」を行なった。

通常,二重ベータ崩壊が起こると,2つの電子と2つの反ニュートリノが放出される。もしニュートリノがマヨラナ粒子だと,ごく稀に2つの電子のみが放出される崩壊モードも起きる。この信号が見つかれば,ニュートリノがマヨラナ粒子だと証明される。

岐阜県飛騨市神岡鉱山の地下1000mにある反ニュートリノ検出器「カムランド」は,1キロトンもの液体シンチレータを使った検出器で,放射性物質が非常に少なく,稀な現象を探索する実験に適している。

カムランドの中に直径3.0mまたは3.8mのミニバルーンを用意し,その中に二重ベータ崩壊核の同位体「キセノン136」を液体シンチレータと一緒に入れた。約380kg使用していたキセノンを約750kgにまで増加させ,ノイズ信号を作る放射性物質を1/10以下にまで減らした。

今回,2019年から約2年分のデータを解析した。検出器や解析ソフトウェアも刷新し,それまで一番多かったノイズ信号は無視できるまでになった。一方で,信号を作るはずのキセノン原子が壊されてできるノイズ信号が予想していたより多いことも見出した。他にも,機械学習を使って,二重ベータ崩壊とそれ以外のノイズ信号を見分ける手法も開発した。

データを解析した結果,ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の崩壊数は,最高感度のデータ中に8事象未満と分かった。この数字は,観測時間を考えると崩壊の頻度,つまり,崩壊の寿命(半減期)になる。信号の半減期は,90%の信頼度で2.3×1026年以上という制限を得た。

マヨラナニュートリノ質量は,半減期と二重ベータ崩壊の理論モデルできまる。半減期の制限は,マヨラナニュートリノ質量への制限になっていて,36-156meVよりも小さい値しか許されないことを示した。

研究グループは「逆階層(約15-50meV)」での検証を始めている。この領域には,マヨラナニュートリノの存在を予言する理論の予測値が少なくとも3つあるなど,近い将来,マヨラナニュートリノの発見を期待している。

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