立命大ら,光合成色素からなるナノリングを構築

立命館大学と名古屋工業大学は,ナフタレンで連結したクロロフィル誘導体分子(数nmサイズ)が,多数規則正しく自己集積することで,自発的に大きな(数百nm)サイズのリング状構造体を形成することを発見した(ニュースリリース)。

自然界には分子が集積することによって形成したリング構造がよく見られる。紅色細菌の持つLH2と呼ばれる光合成アンテナ器官では,環状構造のタンパク質をテンプレート(鋳型)としてクロロフィル分子をリング状に配列させることで,効率的に光合成を行なっている。

つまり,この“リング”というカタチに重要な意味があると考えられ,人工的にリング状の分子集積体を構築することは,新たなソフトマテリアル構築につながると考えられる。

生物は分子システムを用いて簡単にリング状構造体を作り上げるが,リング構造を構築するにはヒモ状構造の始点と終点を繋げる必要があり,人工的にこのようなことを行なうのは非常に難しいとされている。

ヒモ状の分子集積体は成長したとしても,ただ単に伸長することが一般的だが,新しく作ったナフタレンで連結したクロロフィル誘導体は自己集積することで,自発的にナノサイズのリング構造体を形成することを発見した。

このクロロフィル誘導体を低極性溶媒中で自己集積させた直後は,波打ったヒモ状のナノ構造体が多く見られたが,時間が経過することでファイバー状構造はリング状構造に変化していくことがわかった。また,サンプル濃度が低い方がリング構造を作りやすいことや,加熱によってリング構造の形成を促進できることが明らかとなった。

さらに,様々な大きさで形成されるリング状分子集積体だが,フィルターを用いてろ過することによって,小さめのリングのみを回収することにも成功した。

天然光合成においてクロロフィル分子は,光エネルギーの捕集・光エネルギーの伝搬・電気化学エネルギーへの変換を行なっている。今回そのクロロフィル分子を原料に,リング状の分子集積体を構築したことから,人工光合成アンテナや光貯蔵物資のような次世代の光機能材料に応用されることが期待されるという。

具体的には,人工光合成アンテナを使った集光デバイスが完成することで,天気の悪い日でも効率的に発電できるような太陽光発電システムへの活用が期待できるとする。また,光貯蔵物質ができれば,昼間に光エネルギーを蓄え,夜間にそのエネルギーを使うということが可能になると予想する。

さらに研究グループは,今回の分子集積体のように“ヒモ”と“リング”という 2 つの構造変化を活用することで,外部刺激に応答して2つの異なる物性を使い分けることができるスマートマテリアルへの活用にも期待できるとしている。

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