基礎生物学研究所(基生研),ポーランド ヤギェウォ大学,新潟大学,甲南大学,岩手大学,東京工業大学,京都大学は,ペキソファジーが,植物の強光ストレスを軽減することを発見した(ニュースリリース)。
過剰な光は,植物にとってはストレスとなり,光阻害等の傷害を細胞内部に生じさせる。ペルオキシソーム,ミトコンドリア,葉緑体が担う光呼吸は,光阻害を抑制するが,同時にペルオキシソーム内に活性酸素種(ROS)が蓄積し,ROSの一つである過酸化水素を分解するカタラーゼの活性低下が生じる。
オートファジーは,ROS等で傷害を受けたオルガネラを液胞(動物ではリソソーム)で分解することが知られている。前回,研究グループは,植物の酸化状態の高いペルオキシソームがオートファジーにより分解されるペキソファジーについて報告した。酵母や動物の主要なオートファジー因子は,植物にも保存されており,ペキソファジーにも関与していることがわかった。
ペキソファジーは,オートファジーによる選択的オルガネラ分解機構の1つで,傷害を受けたペルオキシソームを特異的に分解する。酵母や動物では,ペキソファジーの分子機構(受容体やオートファゴソーム形成機構)に関する報告も幾つかあるが,巨大な液胞をもつ植物では,酵母や動物と同様な分子機構でペルオキシソームが分解されるかは不明だった。また,強光条件下でのペキソファジーの役割についても良くわかっていなかった。
今回研究グループは,オートファジーが,ROSの蓄積したペルオキシソームを優先的に分解することで,強光下で生じる植物細胞への傷害を軽減し,植物の生存に寄与していることを発見した。また,オートファジーに関わるタンパク質ATG18が,分解されるペルオキシソームを特異的に標識することを示した。
さらに,分解されるペルオキシソームがオートファゴソーム膜に囲まれ液胞に輸送されるマクロペキソファジーに加え,液胞膜で覆われ,液胞内部に輸送されるミクロペキソファジーが誘導される可能性を示した。この様子は単離液胞を用いた解析により明確に確認された。
研究グループはこれらの成果について,光条件下におけるオートファジー変異体の生理解析と,共焦点顕微鏡と電子顕微鏡を用いたイメージング解析,そして生化学的手法を活用し,それらを統合して解析することで,植物におけるペキソファジーの重要な役割を明らかにすることに成功したものだとしている。