新潟大学の研究グループは,支持基板と圧電板からなる複合基板を用いて圧電振動子をリモート励振する技術を開発し,10ppb/Kレベルの周波数温度特性を有するバルク弾性波デバイスを可能にした(ニュースリリース)。
センサ,通信端末等に使用される弾性波デバイスとして,表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)とバルク弾性波(Bulk Acoustic Wave:BAW)が知られている。デジタル時代においては,特に,水晶を用いた弾性波デバイスは産業の塩とも呼ばれ,必要不可欠となっている。
BAWは,高周波化対応のための加工の困難さなどの課題があるが,温度特性に優れ,電気機械結合係数が高く,高い急峻性などの数々の利点がある。例えば,センシングにおいては,検知対象物の付着など負荷の大きな用途にBAWは適している。
今回研究グループは,研磨プロセスによる薄板化に対応しつつ,周波数温度特性,電気機械結合係数の格段の向上が可能なBAWデバイスを開発した。一般的に±1ppm/Kを達成すると優れた温度特性とされるが,この技術では10ppb/Kレベルまで二桁近く改善でき,現在,さらなる特性の向上も実証されているという。
研究グループは,この技術は,上部層の圧電素材,下部層の支持基板材料,電極の連結方法を変えることで,センサアレイ,フィルター,アクチュエータなどの様々な用途に対応可能な波及効果の高い技術だとしている。