香川大学の研究グループは,室温で液晶ガラス状態を示すオリゴフェニレンビニレン誘導体による,高い円偏光蛍光を示す材料の開発に成功した(ニュースリリース)。
キラルな液晶分子が凝集して形成されるキラルネマティック液晶(別名コレステリック液晶)は,分子がねじれて凝集するため,同じ向きに回転する円偏光は透過し,逆向きの円偏光を反射する性質があり,選択反射と呼ばれている。
液晶内部で発光が起こった場合は,同じ向きに回転する円偏光が外部に放出されるので,円偏光発光材料としての研究が行なわれてきた。しかし,通常のキラルネマティック液晶は複屈折が小さく選択反射バンドが狭いため,非常に狭い波長領域の円偏光しか得られないという欠点があった。
また,円偏光発光LEDを実現するためには,半導体としての性質をもつ円偏光材料が必要となる。研究グループは,代表的な有機半導体であり,固体状態でも高い蛍光収率を示すオリゴ(p-フェニレンビニレン)誘導体に注目し,オリゴ(p-フェニレンビニレン)を組み込んだキラル二量体型液晶を合成した。
この液晶材料は大きな複屈折を示すため,100nmを超える広い選択反射バンドを示す。この化合物を液晶ガラス化することにより高い円偏光蛍光を示す材料の開発に成功した。
テトラ(p-フェニレンビニレン)ユニットをキラルエーテルによって結合した二量体型液晶とキラルなアルキル側鎖を導入した単量体型液晶を混合することにより,室温で液晶ガラス状態を示す混合物を調製することができた。液晶状態から急冷することによりガラス化するので,冷却を開始する温度を変えることにより選択反射バンドを調節することができるという。
選択反射バンドが蛍光スペクトルに重なるように調節すると,高品位の円偏光が得られ,円偏光二色比は1.4に達した。また,紫外パルスレーザーを照射すると,正孔が輸送されることによる過渡光電流が観測された。
液晶状態では正孔の移動度は10-4cm2V-1s-1のオーダーだが,室温のガラス状態でも10-5cm2V-1s-1を超える。キャリア移動度の電界・温度依存性の解析から,分子の平面性が移動度向上に有効であることが明らかになった。
研究グループは今後,電気励起による発光に向けて,さらなる移動度・発光量子収率の向上を検討するとしている。