阪大,生体骨のような新材料を金属AMで実現

大阪大学の研究グループは,バイオハイエントロピー合金(BioHEA)とレーザー金属3Dプリンティング(AM)の組み合わせから,高強度・高加工性(高延性)・低弾性・生体親和性を兼ね備え,あたかも生体骨として振る舞う,骨代替可能な新材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

骨代替バイオマテリアル創製のためには,高強度・高加工性(高延性)・低弾性,さらには生体親和性といった多くの機能性を兼ね備えた金属材料の獲得が不可欠となる。研究グループは2017年に世界に先駆けてBioHEAを設計したが,実用化にはさらなる高強度化に加えて低弾性と高加工性を付与する必要があった。

そこで研究グループは,以下の観点から研究開発を実施した。
①BioHEAの相分離傾向の抑制:パラメーター合金設計法により,従来開発の5元系BioHEAに対し,生体為害性(毒性)の低いハフニウムを加えた,6元系(チタン,ジルコニウム,ハフニウム,ニオブ,タンタル,モリブデン)へと構成元素を増加させ,混合のエントロピーを増加することでマクロな相分離傾向を低減。

②レーザー金属AMプロセスによる強制固溶体化:超急冷現象を利用することで,本来,BCC構造が2相として相分離傾向を示す合金に対し,強制固溶によりマクロな相分離を抑制し,単相化(単一相化)する。結果として超高強度を発揮。

③強制固溶体化による加工性獲得:単相化による強制固溶体化によりナノ・原子レベルでは転位運動に対し応力を要するものの,析出物のようなマクロレベルでの障害物が存在しないことから加工性は向上。

④レーザー金属AMプロセスでの超急冷と急峻な温度勾配による結晶方位制御:固液界面での急峻な温度勾配を利用して,低弾性<001>方向を優先配向方位とする単結晶様組織制御。ビーム条件により多結晶状態も実現可能に。

これらにより,真のハイエントロピー効果ともいうべく,強制固溶体強化現象,さらには結晶方位制御を実現し,骨代替デバイスに最適な“高強度・高加工性・低弾性”という背反する特性を発揮させることに成功した。

レーザー金属AMプロセスによる多結晶から単結晶へのマクロオーダーでの結晶方位・組織制御と界面制御は力学特性のカスタム制御を可能にするという。弾性率の自在制御も可能になる。加えて,強制固溶体化によるマクロ偏析の抑制は,合金組成の均一化により,純チタンにも匹敵する親和性,加えて鋳造BioHEAと同等の高い生体親和性を示した。

研究グループはこのBioHEAが医療デバイスのカスタム機能化にも貢献するほか,耐熱性ハイエントロピー合金として航空宇宙材料部材への応用も見込まれるとしている。

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