KDDI総研,リアルタイムエンコーダーを開発

KDDI総合研究所は,三次元(3D)点群圧縮技術の最新の国際標準方式であるV-PCCに対応したリアルタイムエンコーダーの開発に世界で初めて成功したことを発表した(ニュースリリース)。

近年,臨場感のある高精細な三次元データである3D点群を利用したコンテンツ制作が広く行なわれるようになり,それらのコンテンツは膨大なデータ量となっている。また,PCやタブレット,スマートフォン,ヘッドマウントディスプレイなど3D点群のコンテンツを視聴する端末形態は多様化しているという。

このような状況で,さまざまな環境において快適に高品質な視聴体験を提供するためには,3D点群のデータ品質を維持したままデータ量を削減する必要があるが,これまでの圧縮技術では50Mb/s以上のデータ量を要するという。これはモバイル回線を介して安定的に伝送することは困難なデータ量であり,さらなる削減が求められていた。

同社は,2020年からV-PCCの国際標準化活動に携わってきており,V-PCCの実用化に向けた技術や知識を蓄積してきた。V-PCCは非圧縮時と比較し,品質を維持しながら,データ量を1/40に削減することが可能であり,これは,これまでの圧縮技術と比較して2倍の性能に匹敵し,上述の50Mb/s以上というビットレートを半分に抑えることができ,結果,モバイル回線を介した伝送を可能とするという。

一方で,さまざまなショーイベントで臨場感のある視聴を実現するには3D点群として2,000万点/秒(1.0Gb/s)規模が必要となるが,圧縮にかかる処理負荷が高く,リアルタイム処理は困難な状況だった。

今回同社はV-PCCに対応したリアルタイムエンコーダーの実現に向けて,約400倍の高速化につながる2つの技術(3D点群を通常の映像と同じ形式へ高速に変換する技術/V-PCCに適したタスクスケジューリング方式によるCPU使用率を改善する技術)を確立し,PCソフトウェアにより動作する,V-PCC対応リアルタイムエンコーダーの開発に成功したという。

この結果,3D点群のデータ品質を落とすことなく,効率的にモバイル回線でリアルタイム伝送することが可能となるとし,3D点群のライブ配信ができることにより,例えば音楽やファッションなどのショーイベントを対象に,ボリュメトリックスタジオ(3D点群のコンテンツを制作する撮影スタジオ)で撮影した映像をそのままメタバースに参加させるといった新しいイベント体験の創出が期待されるとしている。

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