東工大ら,量子センサで充放電電流を高精度計測

東京工業大学と矢崎総業は,ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センタによる量子センサを開発し,-1,000~+1,000Aの電流を10mAの精度で計測できることを初めて実証した(ニュースリリース)。

電気自動車(EV)の導入促進には,1回充電当たりの走行距離確保とともに搭載電池量の削減が重要とされている。広い電流レンジを持ちながら精度の高い電流センサができれば,走行距離を増加させることや,同じ走行距離であれば搭載電池容量を削減することができる。

研究では,スピンの共鳴周波数として複数物理量(研究では磁場と温度の同時計測)を広い温度範囲で高精度に検出できるダイヤモンド量子センサを実現した。

NVセンタを含有したダイヤモンド材料の作製技術,NVセンタの電流(磁場)による蛍光強度変化を高精度に周波数変換する信号処理技術,広い電流レンジでNVセンタの量子状態操作を可能にする広周波数帯域マイクロ波アンテナ設計技術,環境ノイズ低減のための差動型センサ技術等を構築した。これらにより,広い温度範囲で,-1,000~+1,000Aの電流を10mAの精度で計測できることを世界で初めて実証した。

NVセンタ含有ダイヤモンド材料技術においては,人工合成ダイヤモンド単結晶をベースに量子科学技術研究開発機構(QST)の量子線照射技術を用いてNVセンタを形成した。センサの信号処理技術においては,電流に伴う磁場変化による蛍光強度変化(アナログ信号)を周波数変化量としてデジタル信号に変換し,かつフィードバック制御することにより,高精度で広い電流レンジを実現した。

NVセンタの量子操作に必要なマイクロ波印加用アンテナも電流レンジに対応して広帯域化した。これらの技術を適用したダイヤモンドセンサヘッドをバスバの表裏に設置し,共通の外部磁気ノイズはキャンセルしつつ,バスバ電流による磁気変化だけを捕える差動型センサを構築した。

開発した電流センサをEV搭載用電池の充放電試験装置にて評価した結果,10mA~1,000Aの極めて広いレンジで電流応答出力(周波数変化)が得られ,かつ全域にわたって10mA以下の誤差範囲に収まることがわかった。この結果は,WLTC走行パターンにおける電池のSOC推定誤差を1%以下にできることを示すという。

この技術により,EV搭載電池容量の削減によるEV製造時のCO2排出量低減,軽量化による電費向上によって,2030年における運輸部門のCO2排出量を14百万トン(総量の0.2%)削減できると試算した。研究グループは,カーボンニュートラル社会実現への貢献が期待されるとしている。

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